北海道の冬の釣り

大森均の釣れ釣れ草

 25年ほど前になろうか、釣りとはまったく別件で小樽に出かけた。千歳空港まで迎えに来ていただいた中に水産大学を出られた方がおられた。車中で「北海道では、さすがにこの時期は釣りをしている人はいないでしょう」とお伺いすると、「港にチカ釣りの釣り人がたくさん来ています」と意外な返答。

 この時、チカという魚の名を初めて聞いた。ワカサギに似た可憐(かれん)な魚体をしており、サケ目キュウリウオ科の魚でワカサギ、キュウリウオは近似種とのこと。また、これらキュウリウオ科の魚たちは、種によって程度の差はあるが、独特の香りがあり、野菜のような青臭さがあることから英名にはすべてsmelt(臭いがある)とついているそうだ。科は違うものの、わが国で「香魚」と呼ばれているアユも「Japanese smelt」と名付けられている、とさすが専門家らしい解説だった。

 話を聞くうちにこの魚に興味がフツフツと湧いてきた。もし、チカを漢字で表記するならどう書くのだろう。可憐な魚体を持ち、香魚、ならば「千香」こそふさわしいなどと一人思いを巡らせ、人の名の千香子に行き着いたとき、知り合いの千香子さんの顔を思い出して甘い連想が断たれた。

▽一投一尾

 翌日、午後3時ごろまで自由な時間があった。タクシーに飛び乗って事前に情報を得ていた市内の厩町岸壁に。この岸壁だけで10人ほどの釣り人がチカ釣りに来ていた。

 その中に常連と目されるご夫婦がいた。3~4メートルの延べサオにサビキ仕掛けでアミを餌に釣っている。お昼過ぎにやってきて、ポツポツとアタリがあり、3時間で20尾ほどの釣果とのこと。と、話の最中、ふとサオ先を見るとビリビリとアタリが。針がかりしたチカが水中でキラッと光った。

 奥さんがサオを立てた。水面を割って上がってきた17~18センチの魚体はパール色に輝いていた。すばやく針をはずして装餌し、投入する一連の動作に無駄がない。いつもご主人と一緒に釣りに来ているだけのことはあって、付近で釣っている男性釣り師より手なれている。ちょうどその魚が合図であるかのように、アタリが頻繁になってきた。この地合いは30分ほど続き、この間に20尾ほどが一投一尾のペースで釣れていた。

▽強い後悔

 この小樽の港で見た一つの風景は、私の釣りの歴史にも見慣れないものだった。チカそのものにも関心が及んだ。チカは回遊魚なのでアタリがあると釣れ続く。夏の一時期を除いて年間釣れる魚で、釣りの対象魚の少ないこの時期にも釣れるうれしい魚という。また、北海道では10尾300円くらいでスーパーにも売っているポピュラーな魚らしい。次回、小樽に来る時は必ず釣りの準備をして、と思いながら二十数年過ぎた。

 4年前、友人たちと北海道にノープランで旅行した際、見覚えのある岸壁が。「あっ! チカ釣りの!」。20年以上前の光景と人こそ違えどまったく変わっていない。釣りの準備をしていないことに再び強い後悔が…。

週末のイチオシ気配

■船(1)■北港・大阪

 神戸沖に出る半夜釣りのアジ便期待。アジ23~35センチ15~25尾にメバル16~25センチ5~15尾見込める。オモリ30号。要予約。▽ヤザワ渡船=電話06(6573)7712

■船(2)■小島・大阪

 クログチスタート。同魚30~45センチ5~10尾期待できる。餌はサバ切り身。胴突き3本針、オモリ30号。要予約。▽恵比須丸=電話072(495)0591

■船(3)■栖原・和歌山

 カワハギ堅調。白崎沖に出て同魚18~26センチがいい人で30~60尾程度の安定した釣果が出ている。餌はアサリむき身。要予約。▽かるも丸=電話0737(62)3527

■船(4)■比井・和歌山

 良型寒サバ期待。ラングイに出て同魚38~45センチ30~40尾。さらに上昇期待。お土産は間違いない。チョクリ仕掛け、ハリ12号。要予約。▽岬旅館=電話0738(64)2975

■磯(1)■紀伊長島・三重

 そろそろ沖磯から地方回りで良型が出る時季。40センチ超複数尾見込める。他にホンダワラの餌でイガミ30~40センチ5~10尾。▽石倉渡船=電話0597(47)0712

■磯(2)■須江・和歌山

 ホンタライ、ナナシ、セシマ、カネカケなどでは30~45センチのグレが5尾前後期待できる。水温17~18度。▽しょらさん渡船=電話0735(62)1251

■筏■堂の浦・徳島

 チョイ投げもしくは筏の短竿で足元を狙ってカレイ25~30センチ2~7尾。カレイ針9号、餌は石ゴカイ。要予約。▽細川渡船=電話088(688)2860

■ボート■紀伊長島・三重

 手こぎボートでカマス40センチまでを10~20尾。他には呑ませ釣りでヒラメ40~60センチ1~2尾期待できる。要予約。▽石倉渡船=電話0597(47)0712

■波止■南港・大阪

 大浜ふ頭でチヌが落とし込み、またはオキアミのフカセ釣り、エビ撒き釣りで40~45センチを1~5尾。▽Tポート=電話06(6683)7757

■管理釣り場■水無瀬川・京都

 第16回「アマゴ釣り大会」が22日に行われる。イクラの餌釣りのみ。優勝~5位、飛び賞に賞品と参加賞あり。参加料餌込み5千円。申し込みは漁協まで。▽漁協組合=電話075(961)6500

 (大阪日日APG 松田勝也)

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