英での週休3日制実験が話題に

問われる仕事の量より質と効率

金井啓子の伴走で伴奏

 先日とても興味深い記事を読んだ。週休3日制の社会実験が英国で実施されたというニュースである。この実験は英国の企業61社と従業員約2900人が参加するという大規模なもので、昨年6月から12月の半年間、自主的に週休3日制を採用したという。

 私が興味深く感じたのは、実験を停止したのは3社にとどまり、参加した企業の大部分が週休2日制に戻らない方針だということである。中には、いくらお金を積まれても週休2日制には戻りたくないと答えた人までいたという。

 仕事を週に3日も休めば、売り上げや生産性の低下が起こると考えがちだが、実際は逆だったそうだ。離職者が減り、従業員の燃え尽き感まで低下したという。しかも英国の経済は好景気に沸いているわけではない。急速なインフレや欧州連合(EU)の離脱、不安定な政治状況など、逆に厳しい状況に置かれている。そのような中で週休3日の社会実験に参加し、しかも結果を前向きに捉えている。

 このことは、私たち日本人の働き方を考えるうえでも参考になる。ほんの少し前の日本は一生懸命に働くことが美徳だと誰もが疑わなかった。休むことは怠慢であり、身を粉にして仕事をすることがビジネスマンの務めだと考えられていた。そういえば、今から35年ほど前には「24時間、戦えますか? ジャパニーズ・ビジネスマン!」というテレビCMが流行した。猛烈に働く仕事人間が称賛された時代である。

 しかし時代は確実に変わった。私たちの意識も大きく変化した。そのきっかけの一つは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークによる在宅勤務だろう。満員電車に乗って会社に行かなくても、自宅でパソコンとネット環境さえあれば仕事ができることを多くの企業が実証した。通勤して仕事をするのと変わらない生産性をリモートワークで維持できることを証明した。

 しかも在宅勤務は、通勤などに必要な時間が短縮できる。その時間を利用して趣味や子育て、親の介護などに転用できる。コロナ禍は働き方を変え、仕事に対する意識も変えたといえる。中には本社は不要と考える企業まであるというから驚きだ。週休3日のメリットもこの延長線上にあると感じている。

 大切なのは猛烈に働くことではない。効率性と質を高めることだろう。そろそろ私たちも仕事に対する意識のアップデートが求められる時代に入ったようである。

 (近畿大学総合社会学部教授)

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