「ちゃんとじーみーちー(地道)に」 平井知事が鳥取県庁でのチャットGPT使用に苦言

 質問すると自然な文章で人工知能(AI)が回答する「チャットGPT」。一部省庁や自治体で導入の動きがある中で、鳥取県の平井伸治知事は20日、答弁資料の作成や予算編成、政策策定では使用を禁止する方針を明らかにした。「自治体の意思決定は機械任せにしない」とし、「ちゃんとじーみーちー(地道)にやった方がよほど民主的だ」と、得意の駄じゃれを用いて苦言を呈した。

 チャットGPTは、ウェブ上の大量のデータを学習し、利用者の質問に対する回答を導き出すのが特徴。神奈川県横須賀市では20日に試験導入し、広報の作成や議事録の要約に使用して業務の効率化を目指している。

 鳥取県ではチャットGPTについて、回答内容の精度が不正確でプライバシー問題が未解決であることなどを理由に「不確定なツール」として県職員が業務中にアクセスできない仕組みを導入。また本年度中にAI活用についての職員向けガイドラインを策定する。

 平井知事は使用を禁止することの意義について「地域のことを皆で議論して答えを出していくことが地方自治で、ここに機械が入る余地はない。民主主義の根幹を自ら放棄することは自殺行為だ」と持論を展開。職員育成の観点からも「自分の頭で考える力やコミュニケーション能力を磨く意味ではあまり役に立たない」と述べた。

 一方、チャットGPT以外では、議事録の作成などの場面でのAI活用を進めているとし、「オートメーション化を進めて業務の効率化を図り、浮いた時間を県民との対話や制度設計、政策立案などに充てられるように振り向けていきたい」と意欲を語った。

◆チャットGPTに関する知事の発言は次の通り。

 チャットGPTが話題になっている。いろんな議論がなされており、側聞させていただいているが、強い違和感を覚えるところも正直ある。チャットGPTは素晴らしい発明。人類の経験の仕方や情報収集のあり方、場合によっては社会の構造にも影響してくるようなイノベーションを起こしうるものだ。そこを評価した上で、結論から言えば、答弁資料の作成、予算編成、重要な政策決定では、県職員の使用は禁止したい。

 民主主義や地方自治の危機に差しかかっている。いくら端末をたたいたところで、そこから出てくるのは、世間で言われている色んなお話や情報の混合体。せいぜい過去か現在の話題。これから10、20年先、1年先であっても、その地域にフィットした答えがそこから出てくる訳ではない。ただ、いかにも文章が素晴らしいので、話題が集中しているのだと思う。

 議会答弁で使うなど、いろんな構想が語られているが、それは民主主義の自殺だ。やはり我々が考えないといけないのは、人間が現場に出かけて行って、現場の苦労を聞く、「うちの地域は大都会と違ってこういう特性がある。だからこういう政策が有効なんだ」と考えないといけない。それを考えるために県庁というマシーンがある。端末をたたいて答えが出てくるかのようなところは、正直申し訳ないが使い物にならない。

 県民の代表という議会と対峙する時、私はアドリブで話しているが、全身全霊を込めて相手の意見を聞きながら、一番適切なことを自分の知覚、経験している地域の状況や制度に則して話している。その時には未来に向けてのメッセージを込めることもある。それが本来の議会対策だと思う。議会は幹部職員が答弁することがある。その時に使われるものが機械が出した言葉そのままであれば、それは有権者に対して失礼だ。

 自分たちは最高の仕事をしなくてはならない。鳥取県はお金もないし人口も少ないので余裕がない。そういう中でどうパフォーマンスを出すかは誰も見たことがない世界をつくり上げるかのようなこと。現状認識の言葉、美辞麗句が並んでいるそれを集合したチャットGPTの中では答えは出てき得ないものだ。

 重要な予算編成でも単に文章を作ればよいということではない。大切なのは中身。それは現場の人の声に基づくものなのか。あるいはチャットGPTが新聞や論文から拾ってきた言葉なのか。どっちが大切かといえば、泥臭いが、地べたをはってでも集めた情報の方に価値がある。そうした手間を惜しむことなく、鳥取県のような適正規模であれば、チャットGPTに頼らずとも、地域の頭で考えて、地域で判断することは可能。そういう意味では採用しない。普通の検索、情報収集などで私的に活用することを否定することではない。それがそのまま答弁や予算資料になること、政策として決定されることは、機械が生み出した言葉だけで至るというのは、民主主義を放棄するものである。

 地方自治であれば、現場や地域の方々とつながって私たちが発すべき言葉が予算や答弁に込められていかなければならない。それは残念ながら機械にはできない。そこを勘違いしないように、チャットGPTの使用は答弁資料の作成や予算編成については禁止をする。自治体の意思決定はAIではなく、地域の話し合いの中で決定されるべき。

 これは職員の育成にも役立つ。「平井に依存するというのはどうか」という論調もある中で、県庁のマシーンを育てていかないといけない。非常に便利ではあると思う。しかし行政職員に大切なのは自分の頭で考える力やコミュニケーション能力。生の人と分かり合えて、協力し合えるかどうか。そうした能力を磨く意味ではチャットGPTはあんまり役に立たないのではないか。検索として活用することは否定しないが、肝心なところは自分たちでやろう。それが民主主義であり、地方自治だ。

まあチャットGPTというよりは「ちゃんとじーみーちー」。ちゃんと地道にやったほうが、よほど民主的だ。

◆知事と記者との一問一答は次の通り。

 -政府がG7サミットでAI活用の議論、広島県がチャットGPTの導入を検討しているといった報道がある。政府や他県の動きに対しての知事の思いは。

 政府内、自治体でどういう活用ができるか考えられている。本県においてもAIをどう活用するのか。本年度、AI活用については改めて議論をし、チャットGPTとの付き合い方も含めて、ガイドラインなどを職員向けにもまとめていきたい。

 チャットGPTは美辞麗句とは言わないが、スムーズに表現が出てきて、精度も高まったものだと思うが、そこから抽出される情報は未来ではない。私たちの未来は私たち自身が考えてつくらないといけない。その未来に向けての材料探しで、チャットGPTを検索エンジンとして使うことはありえるかもしれないが、そのまま答弁資料にしようということは強い違和感を感じる。

 やはり、自分たちの地域のことは実情を皆で議論して答えを出していく。これが議会であり、地方自治である。ここに機械が入る余地はない。それが人間社会のあり方だろう。ツールはツールで便利なところはぜひ活用されたらよい。

 県でもチャットボットを使用しているが、丸投げはしていない。答えとして県で監修したものが出てくる。県として責任を持ったものが出てくる。こうしたAIの仕組みは便利だし、有効に活用していくべきだが、こうした民主主義の根幹であるところを自ら放棄することは自殺行為ではないかと懸念している。

 -当面は禁止としているが、具体的にほかの部分で活用することはあるか。ガイドラインができるまでは使わないのか。

 自治体としての意思決定は少なくとも機械任せにはしない。地域のことは地域で考えて、現場の意見を反映させることが、地方自治の当たり前だ。

 運用については、デメリットとして、プライバシーの問題や不正確であること。行政サイドとして守秘義務があり、チャットGPTのデータベースに残ってしまう点でどうか。回答が著作権に引っかかることもある。これらは未解決だ。

 まだ不確定なツールということで、本県では職員が職場のパソコンからはアクセスできないようになっている。

 もちろんガイドラインとかいろいろ考えて、こうした場合にという整理がつけば、そこは改めていきたい。もちろん私用で禁止することではない。検索エンジン的に使うこともあるし、イノベーションを否定することでもないが、地方自治や民主主義の自殺行為は避けるべきだ。

 -アクセス禁止の罰則はあるか。それとも意識を共有していくということか。

 職員を信頼している。趣旨を分かってもらえている。知らず知らずのうちに民主主義や地方自治の屋台骨がむしばまれるのかという問題意識を持っていただければよい。

 -チャットGPTには議事録作成や誤字脱字のチェックなど業務の効率化が期待できるが、また業務を効率化し浮いた時間を対面でしかできない仕事に活用するという考え方もある。

 その部分はチャットGPT以外でやっている。議事録作成についてはロボット化をしている。議事録作成は精度が上がってきており、時間削減になった。積極的にやっていきたい。空いた時間をほかの業務に振り向ける。そうした意味でAIの活用を進めている。オートメーション化を進めて、業務の効率化で浮いた時間を県民との対話やさまざまな制度設計、政策立案などに充てられるように振り向けていきたい。

 
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