米子市美術館で開催中の「大広重展~東海道五拾三次と雪月花 叙情の世界」で、江戸時代後期に活躍した浮世絵師・歌川広重(1797~1858年)が直接筆で描いた貴重な「肉筆画」が注目を集めている。多くの広重ファンらは卓越した描写力に心を奪われながら細部に目を凝らして見入っている。22日まで。
肉筆画は、版木に絵師が下絵を描いてそれを彫師が彫り、摺(すり)師が色を付けるといった複数人で完成させる一般的な浮世絵版画とは異なり、作者自身が紙などに直接描いて仕上げる作品。
今展では広重作品216点中、肉筆画は、宮中の女性を描いた「官女図」や墨の濃淡で趣深い水辺の景色を描いた「待乳山風景」など6点。軽やかな筆のタッチから広重の息づかいを感じようと、じっくり鑑賞するファンの姿もあった。
青戸貴子副館長は「江戸時代に広重が実際にじかに描いた作品はとても貴重。ぜひ見てほしい」と話す。
同展は肉筆画や風景画、美人画など広重の作品を中心に計286点を展示。米子市、新日本海新聞社など主催、山陰酸素グループ特別協賛。(井川朋子)