うつわcafeハリス

珈琲カップで日本酒を 店頭に30客ずらり 好みの器で一杯 新たな客層生む

あきない見聞録

 アンティークの珈琲(コーヒー)カップで日本酒を楽しめる「うつわcafeハリス」。店を一人で切り盛りする中島訓子さん(58)が、父親が収集したデザインの違う200客ほどの珈琲カップの中から週替わりで30客を選んで店に並べ、お客さんのお気に入りの器に地元茨木で作られた日本酒「MishimaOmachi83」(中尾酒造)を注ぐ。中島さんは「珈琲カップで日本酒を飲むという“非日常”を過ごして」と話す。

 2019年6月20日、中島さんの55歳の誕生日にオープン。お客さんがうつわを選ぶスタイルで、こだわりのオリジナルブレンドコーヒーを提供し、ママ友や年配の女性のつながりの場となっていた。しかしオープン半年後にコロナ禍が直撃。「ダメージがあった。ママ友が店からいなくなった」と振り返る。

 子育てが一段落し、50歳の声を聞いてカフェの経営を考え始めた。養成講座や創業塾に通い、実際にカフェで1年半働いて経験を積んだ。「やると決めた時に方法は何があるかを考えた」という。「主婦なので人脈がない」中での模索が続き、店の場所も「2年ぐらい探していた」。そして5年の歳月を経て、ようやく開店にこぎ着けた。

 ただ、「机上の想定」はもろくも崩れ、「一日の売り上げ計画など計算上でやっていけても実際は違う」と難しさも身にしみた。それでも週末の夜カフェや、3月から始めた珈琲カップで日本酒を楽しむ『珈琲・紅茶…ときどき日本酒』などの工夫で新たな客層を呼び込んでいる。

 店名のハリスは、中島さんが小学生の時に読んだ本「ハリスおばさんパリへ行く」が由来。「前向きに誰からも愛され、積極的で頑張っているところ」に共感した。「まだ年配の方が戻ってきていない」と不安もあるが、「続けていきたい」と頑張って前を向く。

 店に並ぶ30客の器は「春っぽい色や花柄」など季節感を大切にする。頑固で厳格で武骨だった「亡き父が有田や九谷など日本各地を巡って、何でこんなにかわいらしくてきれいなカップを選んだのか」を思いながら「気分によって変えてます」。

 お気に入りの器で飲むMishimaOmachi83は1杯700円。5種類の手作りおつまみプレートも日本酒との相性抜群。昼はおからこんにゃくカツのサンドイッチセットが人気で、1日限定5食のカレーも用意。ギャラリーやワークショップ、ライブなども行う。中島さんは「ここが皆さんのつながりの場になることが一番です」。

同じカテゴリーの記事