政治分野で目立つ女性軽視発言

女性の参政権獲得から77年

金井啓子の伴走で伴奏

 女性が参政権を得て77年。以来、女性の社会進出が進み、企業では女性管理職が活躍する場面など珍しくない。男社会の自衛隊にも女性幹部が誕生し、潜水艦に女性自衛官が乗り込む時代である。

 ただ、日本の政治分野においては女性の進出は遅れている。世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2022」の発表によると、女性の国会議員進出は調査した146カ国のうち日本は133位と低く、女性国会議員比率は15・4%しかない。おまけに日本の政治家の中には女性を蔑視するような人物までいる。

 森喜朗元首相は東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だったとき、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言して世間から批判を浴びて会長を辞任した。森氏が日本の元首相であることにあぜんとする。

 日本維新の会の馬場伸幸代表も3月28日の記者会見で、「女性が政界に進出するのはウエルカムだが、今の選挙制度が続く限り、女性枠を設けてもなかなか女性が一定数、国会や地方議会に定着することは難しいと思う」「私自身も1年365日24時間、寝ているときとお風呂に入っているとき以外、常に選挙を考えて政治活動をしている。それを受け入れて実行できる女性はかなり少ないと思う」などと語り、これが女性を侮辱する発言ではないかと炎上した。

 その後、馬場氏はツイッターで「我が党は女性の政界入りを具体的に応援すべく子育て中の候補者に選挙前後に必要なベビーシッターや一時保育料をサポートしています」と書き込み火消しに走ったが、先のような発言をしたことは間違いない。

 馬場氏は政治家であり国政政党の党首である。その職責上、政治や選挙のことが頭の中から離れないのは理解できる。だが1年365日、ほぼ一日中というのはまったく解せない。家族のことや社会の問題、ロシア・ウクライナ紛争などは頭にないということか。

 そもそも常に選挙について考えることや政治活動をすることがしにくい女性が多いとしたら、それは選挙制度やその女性の能力や考え方の問題ではなく、社会の在り方のせいだろう。その社会は誰が作ったのか。また、睡眠と風呂以外はすべて政治活動というならば、彼の衣服の洗濯や自宅の掃除、食事作りは誰がやっているのか。

 女性が参政権を得て77年。森氏や馬場氏のような人物がいる限り、政治分野での女性進出はまだ遠い。

 (近畿大学総合社会学部教授)

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