今年3月に開業したばかりの「むらい動物病院」。高度医療に対応した医院で腕を磨いた獣医師が診療に当たる。犬猫だけでなく、「エキゾチックアニマル」と呼ばれるウサギやフェレットなど診察対象は幅広く、動物の特性や飼い主の気持ちに寄り添った医療サービスの提供を目指している。
院長は、村井信一郎獣医師。昨年まで大阪市西区の大阪動物医療センターに勤務しており、CTやMRIを含む高度医療措置や夜間救急にも対応してきた。一日に最大で200人ほどの患者(飼い主)が訪れる大病院で腕を磨き、さらに技術を高めたいと開業に至った経緯がある。他にハムスター、ミニブタ、フクロモモンガ、ハリネズミと懐は広く、爬虫(はちゅう)類、両生類も得意としている。
動物は話せないので、病気と症状、動きからの判断が重要だ。例えば「体をすごくかいている」という症状。飼い主は「皮膚がかゆいのでは」と思っていても、動物自身は「痛み」であることも。腰をなめ続けているネコに腎結石の症状があったり、背中をかき続けている理由が腰痛であったり、前足をなめ続けている理由が腱鞘(けんしょう)炎であったりと多岐にわたる。
さらに村井院長によると、犬種などによっても診察が異なるという。フレンチブルドッグは骨格が大きく、少しの痛みなら気にしないことでも、トイプードルが腱鞘炎になるとしきりに気にかける傾向がある。そういった性質も総合的に判断し、知識と経験を踏まえた丁寧な診療が信条だ。
開業に当たっては仲介業者によるコンサルティングを受けたが、「建築や医療器具、パソコン、エックス線はそれぞれ誰に頼めばいいのか。動物病院を立ち上げるのに必要な知識は、獣医師とまったく関係ないところにあった」と当初の苦労を振り返る。開業資金は、大阪信用金庫と日本政策金融公庫が今年1月に創設した融資商品「ラコンテ」を活用。創業を支援するスキームで、同院が第1号案件となった。
中学、高校、大学では陸上競技部で短距離を専門にしており、体力を維持するため現在はフルマラソンにも出場する。「集中力を高めるため」の筋力トレーニングにも力を入れていたことから、“マッスル獣医師”としてテレビ番組で紹介されたこともある。
勤務医時代は「近い距離で手術を見せてもらったり、専門の獣医師から多くを学ばせてもらった」という村井院長。今後は「僕がそれを発信する側になり、動物看護師やトリマー、獣医師らがここから巣立っていけるような場所になれば」と高みを目指している。