記録魚を釣りたい

気の遠くなるような確率

大森均の釣れ釣れ草

 日本記録の魚を釣りたいと思う釣り人は、釣り人口の中にどれほどいるだろう。毎月、釣りに関する雑誌などを買って読むレベルの人は、訪れるかどうかは別にしてその僥倖(ぎょうこう)を望んでいるに違いない。その記録がどれほど手の届かない遠いものかを考えてみよう。

 例えば、寒グレの最盛期に紀伊半島の釣り場でグレの41センチと43センチを釣ったなら、スポーツ新聞の釣果欄の見出しに「南紀〇〇で41センチと43センチ上がる!」と出る。少しデータの鮮度が悪いかも知れないが、グレの日本記録はなんと83・3センチ!私の記録は、ほぼ50年の磯釣り歴で53センチ。

 ある磯釣協議会の5年間の最長寸記録は、長崎県の男女群島で釣った63・5センチというから、このサイズ(60センチ超)を釣り上げる確率は、仮に会員を約千人とすれば、5年のうちに“狂”のつく磯釣り師が平均50回釣行したとして5万回で1回の確率ということになる。

 それも和歌山あたりでは50万分の1になり、男女群島まで出かけると5千分の1になるから、より可能性のある釣り場を求めて「遠征」なる言葉が使われるようになる。これは気の遠くなるような確率だ。

▽スズキ狙いの外道

 以前にもこの欄で書いたが、チヌは35センチ前後(4歳)まではほぼ均等に育つが、それ以降は生息条件で差異が生まれるとのこと。捕獲したチヌをうろこから推定する技術で、千葉県房総半島の勝浦のチヌは54センチが11歳、長崎県五島列島の玉之浦湾のチヌは60センチが10歳だったそうだ。

 このチヌの日本記録が2002年に福岡の船越漁港で上がった70・2センチであるが、サビキで釣ったカタクチイワシを泳がしている最中にそれに食いついた、との話は当時の雑誌にも書かれ話題になった。どうやら日本新記録のチヌはスズキ狙いの外道だった可能性が高いが、日本国中の釣り人が長い間成し得なかったチヌの記録更新があっさり思いもかけぬ釣り方でなされてしまった。まぁ、世の中案外こんなものかもしれませんなぁ。

▽コイの最長寸は119センチ

 この類いの記録は近年の管理されたものは信頼するに足るが、大昔のものは疑わしいものが多い。江戸時代の文献、小林義兄の著した「湖魚考」という本には寛政5年、琵琶湖で7尺(210センチ)のコイが釣れたと書いてある。ありえないが、もし本当だとしても、当時の釣り具などの強度などを想像すれば、これは釣ったのではなく捕まえたと解した方が話に無理がない。

 コイの記録は、確か20年ほど前に草津市下寺町の琵琶湖岸で119センチが釣り上げられ更新された。ちなみに記憶が定かでないが、八郎潟で釣れた118センチがそれまで長い間、最長寸であったように思う。このコイを琵琶湖で行われている釣り大会に参加していた老人が1時間かけて取り込んだらしい。コイ釣り歴40年のこの老人は、新聞社の取材に「釣り人なら日本一の大物は夢。今度は120センチ以上を狙いたい」とコメントしたというから、釣り人の欲は天井知らずというところか。恐れ入りました。

週末のイチオシ気配

■船(1)■明石・兵庫

 明石大橋から淡路沖にかけてガシラ堅調。比較的大型が交じる。ガシラ20~28センチ30~40尾とメバル20~28センチ2~3尾。要予約。▽名田屋乗合船=電話078(912)7211

■船(2)■戸津井・和歌山

 黒島沖に出る平アジ上向き。同魚37~45センチ30~50尾と40センチ前後のサバ1~5尾が竿頭。オモリ110号。水温16度。要予約。▽つるしま丸=電話0738(66)0234

■船(3)■阿尾・和歌山

 日の岬沖に出てイサギが上昇気配。19日、同魚25~35センチ68尾とアジ35センチ2~3尾。オモリ120号。吹き流し3本針。要予約。▽共栄丸=電話0738(64)2318

■磯(1)■栖原・和歌山

 カルモ島でチヌ上向き。フカセ釣りで35~45センチ3~15尾見込める。17日、同魚38~45センチ5尾。ハリス2号。エサはオキアミ。▽かるも丸=電話0737(62)3527

■磯(2)■大引・和歌山

 磯のマダイ狙いが一番。アシカの親と子、ヒジキ島などの磯で良型(50センチ超)がフカセ釣り、カゴ釣りともに1~2尾。▽上野渡船=電話0738(65)1222

■筏■堂ノ浦・徳島

 チヌ好調。17日、湾口カセのダンゴ釣りで同魚23~43センチ19尾。他にウチノ海の筏でサヨリ112尾。呑ませのヒラメで35~45センチ1~2尾狙える。▽斎藤渡船=電話088(688)0453

■ボート■紀伊長島・三重

 フカセ釣りでマダイ、グレ好調。17日、マダイ32~46センチ7尾とグレ38センチ1尾。ヤエンのアオリイカは1キロまでを2~5ハイ。要予約。▽石倉渡船=電話05974(7)0712

■波止■武庫川一文字・兵庫

 ハネ本格化。ハネ40~70センチ3~5尾(4ヒロ)見込める。17日、4番で同魚45~65センチ6尾とチヌ40~45センチ5尾。▽武庫川渡船=電話06(6430)6519

■投げ■妻鹿・兵庫

 戻りカレイ期待。7番付近で25~30センチ1~5尾。キス、ガシラなど多彩な外道でお土産はできる。エサは青イソメ。▽日の出渡船=電話0792(46)3030

■バス■琵琶湖・滋賀

 いよいよ水温の上昇に伴って釣果も比例。連日50センチ台後半がヒットしている。そろそろロクマル登場するころ。▽小林貸船釣具店=電話077(522)6347

 (大阪日日APG 川崎禎昭)

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