舞台鑑賞で成長育む 豊中池田おやこ劇場創立50周年

 生の舞台鑑賞を通して子どもたちの心を豊かにし、成長を育んできた「豊中池田おやこ劇場」が創立50周年を迎えた。舞台劇、人形劇、音楽、落語、狂言などさまざまなジャンルの生の舞台を3カ月に1度、親子で楽しむ。舞台が終わり、ロビーに出てきた子どもたちの笑顔は、昔も今も変わることはない。

 おやこ劇場はテレビが各家庭に普及し、そのまっただ中にいる“テレビっ子”に生の演劇を見てもらおうと1966(昭和41)年に福岡県で産声を上げ、全国に飛び火。豊中でも東豊中団地を中心に73年6月に会員600人で発足し、2007年に池田おやこ劇場と合併した。

 発足に携わった水野寿子さん(81)は「おやこ劇場ができたらすばらしい。一緒にやりませんか」と声をかけ続けて縁の下から発足を支えた。「準備に3年くらいかかりました」と当時を懐かしく振り返る。そして家の近所が開催会場になった時には「家が荷物置き場になりました」と相好を崩す。

 85年には2千人を超えた会員も、社会状況や子どもたちを取り巻く環境の変化が影響して現在は約150人。3世代で参加している会員もいるが、事務局長の奥田祥子さん(57)と運営委員長の吉田恭子さん(64)は「会員を増やすことが課題」と、チラシやはがき、インスタグラムやホームページ、タウン誌への広報などで普及に力を注ぐ。

 3カ月ごとに2作品を選び、「この作品を見たい」という声を集めて話し合いながら鑑賞する作品を決めていく。あくまでも会員が主役だ。同劇場を切り盛りする会員は「子どもがポカンと口を開けて見ている姿に感動します。子どもの感動から親が学ぶ会でもあります」「生の舞台はテレビとは違う反応があってびっくりする」と話す。

 1歳と7歳の男の子がいる西田由香里さん(38)は「義母と夫が入っていた」ことで会員になり活動を支える。「子どもたちは家に帰ったら演者の歌を歌ったりしている。1年に4回出かけるきっかけになり、親子で思い出がつくれる」と子どもの成長を見つめる。

 作品を見るほかにも、おやこまつりやキャンプ、料理会、あそぼう会なども企画。親子や年齢が違う仲間とのふれあいの中で、子どもたちの自主性や思いやりの心、友情や思考力を高めるために“素人のお母さん集団”は奮闘している。

 「次の世代に継続して残していくことが大切」と奥田さん。共働きの家庭が増え、ビデオ会議などの活用も視野に入れて今後の活動方法も変えていくことが必要。未来の50年に向けて、奥田さんは「どのようにバトンをつないでいくのがいいのか」を模索する。

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