コラム

[野分 大阪発・論点] 安倍首相の足元は安泰です!未曽有の国難でも

2020年4月29日
相沢 冬樹

 4月24日、金曜日。森友事件の公文書改ざんで死に追い込まれた財務省近畿財務局の赤木俊夫さんの記事を出した私は、首相官邸周辺を訪れていた。と言っても安倍首相に用があったわけではない。あっても会ってくれないだろう。私が用があったのは、官邸のすぐ下にあるお店、「支那麺はしご 赤坂店」。

 私にこのお店を教えてくれたのは西岡研介さん。フリーのノンフィクションライターだ。元神戸新聞記者で兵庫県警担当。当時、私もNHK神戸放送局で兵庫県警担当。われわれはライバルであり同志でもあった。

 お昼時はいつも混雑して行列ができるこのお店も、今はお客が少ない。その店内の壁に、見慣れた顔写真が掲げてある。そう、安倍首相。店の外にある官邸の今の主である。

 これは「リベラルタイム」という雑誌の記事。その名もわが国の首相にふさわしい。記事は《「安倍総理」が行った店》というタイトルだ。記事によると、安倍首相は5年前、2015年1月12日の昼、秘書官ら10人以上とともにお店を訪れ、太肉(だあろう)担々麺とギョーザを味わったようだ。

 私はお店の人に尋ねてみた。

 「安倍さんはよく来られるんですか?」

 「いや、さすがによくは…立場が立場ですからね」

 「ここは首相官邸がすぐそばですよね」

 「ええ、この時はSPさんも大勢来て大変でした」

 安倍首相は今、未曽有の危機にある。国難と言うよりむしろ首相の危機。アベノマスク。10万円給付の迷走。コラボ動画の炎上。コロナ拡大防止で「外出しないで」と呼び掛けているさなかに妻の大分旅行が発覚。その数日後、再び「外出しないで」と呼び掛けた。妻ではなく国民に。

 すべて自分がしでかしたことではあるが、それでなくても頭が痛いのに、公文書改ざんで命を絶った赤木俊夫さんが書き残した「手記」を記事にする輩(やから)がいる。

 そんな安倍さんのことを、この人も心配している。亡くなった赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)のお母さん。俊夫さんにとっては義母にあたるが、お母さんは俊夫さんと仲良しで、よく一緒に旅行や行楽に出かけていたという。

 俊夫さんのことを「財務省に殺された」と語り、「財務省に鉄砲持って乗り込みたい」とまで怒り心頭のお母さんだが、安倍首相のことは今も「安倍ちゃん」と呼ぶ。「安倍ちゃんもかわいそうよね」と。

 ですが、安倍首相を支持している皆さん、ご安心ください。安倍首相の足元は微塵(みじん)も揺らいでおりません! 首相官邸の足元にあるこのお店に、安倍首相の記事が掲げてある限り。

 誰が何を言おうと、どんなことがあろうと安倍さんを断固支持する。それが草の根安倍シンパというもの。赤木さんの義母さんが「安倍ちゃん」を「かわいそう」と言う心理と似ているのだと思う。その草の根支持がある限り、支持率は落ちず、安倍首相は安泰だ。

 もっとも安倍首相が安泰でも、わが国が安泰とは限らない。コロナも、森友も、赤木さんのことも。こんなに深刻なのに、なぜか笑えることばかりする安倍政権。

 (大阪日日新聞編集局長・記者)


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