コラム

[潮騒] 9月20日(月)

2021年9月20日

 子どものころ、「おじいちゃん、おばあちゃんには大きな声で話して!」と注意されたことはないだろうか。自身を振り返れば、思春期になると電話口で大きな声を出すのが気恥ずかしく、内容もそこそこに受話器を置いていた。思い出すと、少し胸が痛い◆国内の難聴者は約1500万人。年齢が進むとともに聴力が低下する加齢性難聴は、50歳代から症状が現れ、60歳代後半で3人に1人、75歳以上になると7割以上が難聴に該当するとある(2012年日本老年医学会誌)。会話が聞き取れなかったり、テレビやラジオの音量を注意されたりが主な症状だ◆翻って国内の補聴器の普及率は14%(18年日本補聴器工業会)と低い水準。背景には、調整の手間や価格があるが、つまるところ「耳が遠くなるのは仕方ない」という諦めが、本人にも周囲にもあるのだろう◆ただ、「聞こえ」の課題は精神的ストレスを伴い、周囲からの孤立を招く。脳への刺激の減少と認知能力低下の相関関係も報告されている。「仕方ない」では済まされない◆20日は「敬老の日」。コロナ禍以降、地元に帰省できずにいる人も多い。募る思いを込めた高価なギフトもいいが、電話やオンラインで画面越しに言葉を交わす喜びをかみしめたい。(光)


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