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【 賀茂川耕助 】



低水準の米国失業率

2019/5/16

 米国の労働省が発表した4月の雇用統計によると米国の失業率は3・6%と、1969年12月以来およそ50年ぶりの低水準になったという。

 トランプ大統領の政策により米国の経済が上向いていると主流メディアは報じているが、米国の景気先行指数として用いられる別の統計に、新規失業保険給付の申請数がある。米国では自己都合理由による離職に対して失業給付はしないため日本よりも給付は厳しい。この新規に申請される失業給付の件数を米労働省雇用統計局が毎週集計し、集計期間の翌木曜日に発表しているのだが、今年4月27日までの週の申請件数は、季節調整を加えると23万件と過去1年半の間では最も多かったという。

■1億人以上仕事なし

 就業年齢にある米国人が職を失うと、米国政府の統計では「失業者」か「非労働人口」に分類される。働いていない米国人の総数はこの両方を合わせた数字である。過去10年間、米国の「失業者」は徐々に減少し、現在は620万人だという。しかし「非労働人口」は増加し続け、9500万人を超す。合計すると1億人以上の就業年齢の米国人は仕事についていないのであり、トランプ大統領になっても経済はまったく上向いてはいないということだ。

 興味深いことに米国では今、労働者の支持を受けてトランプ大統領が誕生したように、富裕層やワシントンの体制派に対する人々の怒りをもとに民主党のアレクサンドリア・オカシオ−コルテス氏が昨年米国史上最年少で下院議員に選ばれた。オカシオ―コルテス議員は、グリーン・ニューディール法案という化石燃料に依存した従来型の産業を、再生可能エネルギーを中心とした産業構造に変えようとする法案はじめ、インフラ整備への公共投資、国民皆保険、大学無償化、政府による雇用保障制度など米国では前代未聞の提案をしている。

■今話題の「MMT」

 社会主義を否定する「右」のトランプ大統領にとってまさに「極左」のような政策ばかりだが、民主社会主義者の新人女性議員が選ばれたのも、米国で人々が富の格差や失業にうんざりしていることの表れだといえる。提案を実現するために、1千万ドル以上の所得のある超富裕層の累進課税率を70%にすること、赤字国債の発行などを提案しているが、この財政赤字を良しとする経済のフレームワーク「現代金融理論」(MMT)が今米国で話題になっている。

 億万長者ビル・ゲイツ氏はMMTを「狂った考えで、財政赤字が容認できるのはGDPの150%くらいまで」と一蹴し、また「ハイパーインフレになる」といった反論もあるが、財政赤字がGDPの230%を超しながらインフレも起きない日本はすでにMMTの実験場だという識者もいる。29歳の新人女性議員が提唱する「財政赤字は問題ない、どんどん財政拡大すべき」という理論がどこまで米国民の支持を集めるかは分からないが、世論を喚起する大きな話題となることは確かである。(評論家)

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