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「大阪ほんま本大賞」受賞 蓮見恭子さんに聞く

2020年8月2日

 関西の書店員と書籍販売会社が『大阪人にほんまに読んでほしい本』を選ぶ「大阪ほんま本大賞」の今年の受賞作に、堺市在住の作家、蓮見恭子さんの「たこ焼きの岸本」(ハルキ文庫)が選ばれた。住吉大社周辺(大阪市住吉区)の商店街を舞台に、たこ焼き屋の女主人がさまざまな問題を仲間とともに解決していく人情物語。「ただのグルメ小説にはしたくなかった」という蓮見さんに、執筆の経緯や町の魅力、今後の作家活動について聞いた。

「(背景にある社会問題も)深刻になりすぎず大阪らしくコミカルに書いた」と蓮見さん。地元発の文学賞に「本当にうれしい」と喜ぶ=大阪市内

 −商店街のたこ焼き屋の女主人が主人公。執筆のきっかけは。

 出版社から大阪の食、せっかくだからたこ焼きに関連した小説を書いてほしいと。たこ焼きは、わざわざ電車に乗って遠くに食べに行く物ではなく、近所で食べるもの。近所で買うなら町自体が魅力的でないと小説にならない。住吉大社は子どもの頃からよく行っていた場所。家の軒先でたこ焼き屋をしているおばちゃんが、子どもの誘拐事件を解決するのが第1話で、後は話を広げていった。

 −住吉の町の魅力は。

 お初天神や天神橋筋商店街(ともに北区)も候補に挙がったが、より住宅地に近い商店街ということで住吉。住吉大社は外国人の観光客も多いが、周辺は観光地化されていない。昔からあるような店ばかりで、へんにきれいに整えられておらず、ほどよい生活感があるのが魅力。今も週に1回は通って買い物している。

 −物語では、独居老人やシングルマザーなどの社会問題も背景に描く。主人公の十喜子は町の問題を解決する一方で、家族関係に悩みを抱える。

 そういった問題をストレートに書いてもいいが、ミステリー仕立てにすることでより深く書けると思った。読み物自体は気軽に読んでもらいたいので、深刻になりすぎず大阪らしくコミカルに書きたいと思った。

 −ミステリー小説でデビューして今作で13作目。ミステリーのほかスポーツや青春小説もあり、今回は下町人情もの。

 出版社から依頼されたお題で書いているが、結局書いているのは家族の話、人と人とのふれあい話。ミステリー仕立ては読者の読む推進力になるが、人間のいろんな感情を書くのが好き。ミステリーでデビューしたが、謎解きやトリックよりも人間ドラマを描く方向にきたという感じです。

 −今後は。

 今は、主人公の十喜子さんの高校時代を続編として執筆中です。年を重ねて経験を積むと、いろいろと書けるものがあると思うので、作家としてはできるだけ長く書きたいですね。

【プロフィル】はすみ・きょうこ 1965年生まれ。大阪芸術大美術学科卒業後、大阪創作サポートセンターを受講しながら小説を執筆。2010年に「女騎手」が第30回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、作家デビュー。堺市在住。

【たこ焼きの岸本】住吉大社前で亡き夫が残したたこ焼き屋を営む岸本十喜子。町の見守り隊として家出や詐欺などの問題を解決していく。そこに消息不明だった息子が現れる。

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