大阪ニュース

戦火で消えた画学生の“声”感じて 「無言館」特別展

2020年9月16日

 戦争で亡くなった画学生たちの作品を収集・展示する美術館「無言館」(長野県)の特別展が、神戸市東灘区の神戸ゆかりの美術館で11月29日まで開かれている。大阪など関西出身者の作品など約130点の絵画を展示。無言館の窪島誠一郎館主(79)は「苦しくても絵に真剣に向かい合った彼らのひたむきな生きざまを感じてほしい」と呼びかけている。

里帰り展示となった田中角治郎さんの作品「初夏(井之頭公園)」
戦争で亡くなった画学生らの作品を展示する会場

 無言館は出征経験のある画家、野見山暁治氏(99)の意思を受け、窪島館主が1997年に開館。全国各地の遺族を訪ね歩いて作品を収集しており、現在は約130人、約600点の作品を収蔵している。今回は戦後75年の節目となることから、同美術館などが企画した。

■「夢」や「恋」テーマ

 「夢」や「恋」など五つのテーマに沿った作品を展示。故郷の街並みを活写した神戸出身の杉原基司さん(1921〜45年)の「神戸東亜ロード」や、大阪出身で中国で27歳の若さで戦死した田中角治郎さん(12〜40年)の「初夏(井之頭公園)」などが里帰り展示となった。

 20代前半に制作された作品が多く、若々しい筆致のものが目立つ。同美術館の金井紀子学芸員は「彼らの作品の良さを見てもらうため、あえて光量を高くしている」と説明する。油彩画だけでなく、日本画、彫刻などバリエーション豊かな展示内容となっている。

 「画学生の作品だから技術的にはまだまだと感じることもあった」と窪島館主。しかし、収集していくうちに作品や作者からの「声」が聞こえてきたという。「もっと生きたかった、もっと描きたかったと言っているようだった」

■タスキをつなぐ

 無言館ではこれまで40回以上、全国各地で巡回展を行っているが、目的の一つには情報収集もある。これまでも地方での特別展をきっかけに新たな作家、作品を発掘してきた。また直接、長野県に行けない高齢化する遺族への配慮もある。

 そして一番の目的は画学生の気持ちを継承すること。窪島館主は「反戦、平和ということとは少し違う。彼らは限られた時間、作品に全力を注いだ。人間はここまで強く生きられるのか」。その思いを次に伝えることが使命と話す。

 作品の大半は終戦後、家族が50年間守ってきた貴重なもの。引き継いだ窪島館主は自らを「駅伝の第2走者」という。そして今必要なのは第3走者。「若者に背負わせてはいけない。まず大人世代に来てもらい、感じ取ってほしい」と願っている。

   ◇    ◇

 午前10時〜午後5時(入館は午後4時半)。休館日は毎週月曜日(祝日は開館)と9月23日、11月24日。一般千円、大学生500円、高校生以下無料。問い合わせは電話078(858)1520。神戸ゆかりの美術館。


サイト内検索