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大阪都構想 再びの住民投票 「二重行政」

2020年10月15日

 大阪都構想の推進派が焦点の一つとしているのが、大阪府と大阪市の二重行政の解消だ。酷似した行政サービスを一体化することで、非効率な税金投入を防ぐことができ、大阪の成長を進める。制度として維持、担保すれば、かつての二の舞いにならないと主張する。

住吉母子医療センターと統合された旧住吉市民病院跡。現在は手前の建物で診療が行われており、奥の建物は取り壊しが進む=大阪市住之江区

■あくまで人間関係

 府と市による競合の端緒は、1950年代にさかのぼる。政令指定都市となった市の権限は強化され、バブル期には市が旧「大阪ワールドトレードセンタービル」、府が「りんくうゲートタワービル」を競い合って建設。二重行政の象徴とやゆされた。

 2008年に橋下徹知事の就任で風向きが変化し、11年には府市統合本部を立ち上げるなど解消に向けて動く。現在の松井一郎市長、吉村洋文知事は「バーチャル都構想」として連携する枠組みを構築し、共通する公共サービス、教育文化施設などの統合を進めた。

 14年に信用保証協会、17年には技術系機関が大阪産業技術研究所としてそれぞれ統合。かつて「府市あわせ(不幸せ)」と呼ばれた状況には見えない。

 松井市長が「二重行政は解消された」と話すほどに成果は上がったが、「あくまで首長同士の人間関係による。今後、政治状況が変化したとしても維持、継続できる担保が必要」(吉村知事)として都構想実現による制度化を訴える。

■時間とお金の無駄

 二重行政解消による経済効果には、疑問視する声もある。18年に市が嘉悦学園(東京都)に依頼し、作成した経済効果に関する調査報告書を分析した京都大の川端祐一郎助教(都市社会工学)らによると、解消による経済効果は10年間で39億〜67億円、年間では約4億〜6億円にとどまる。川端助教は「都構想の実現コストに見合わない小規模なもの。その上、現実に削減できるかは難しい」と指摘する。

 一方、行政サービスの集約が地域に混乱をもたらした例もある。同市住之江区にあった旧住吉市民病院。老朽化に伴い建て替えが予定されていたが、12年に橋下市長(当時)が中止を決定。住吉区の府立急性期・総合医療センターとの統合を指示した。

 結局、地元住民の反対、民間病院の誘致と断念、統合、市立の新病院建設と紆余(うよ)曲折。当初の建て替え費用は試算で約57億円だったが、統合の整備費は約80億円。さらに新病院建設費がかさむことになる。

 第1子を旧住吉市民病院で、第2子を統合された住吉母子医療センターで出産した西成区の安達明日香さん(37)は、子どもの急な発熱にも診療を断られるなど「地域に寄り添う姿勢が薄い。市民病院時より使い勝手が悪くなった」と感じ、「市民病院を廃止して、長い時間かけて論議した末、市立の病院を建設。最初から建て替えていればよかったのに。時間とお金の無駄だった」と憤る。

 立命館大の平岡和久教授(地方財政学)は「二重行政という言葉自体が学術的に定義されておらず、他の道府県と政令市間では問題視されていない。そもそも政令市を解体する理由にはならない」と主張している。


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