大阪ニュース

私はこう考える 大阪都構想 権限と財源あってこそ

2020年10月18日

立命館大教授 森 裕之氏(52)

都構想の制度案について「複雑怪奇」と断じる森教授=大阪市内

 大阪市を廃止し、4特別区を設置する「大阪都構想」の狙いの一つとして挙げられる「ニアイズベター」。人口270万人規模の大阪市の市長よりも、四つに分割されて70万人規模となる特別区の区長の方が、地域のニーズに合った政策が可能としている。これに対し、「ニアではあるがベターではない」と否定する。

■複雑になりすぎる

 「四つになると近くなるというのはその通り」と住民との近さは認めるものの、「ベターかどうかは別。小さければいいわけではなく、権限と財源があって、近いことで市民の意思が反映された行政サービスができるというのがニアイズベター。特別区は権限と金を、大阪府に吸い取られる自治体。町をどうするかという意思を反映させられなくなる」と断じる。

 都構想の制度案では、現在の24行政区に一定の行政サービスを行う地域自治区を置く。「町や学校をどうするかなど意見ができるが、特別区が意見を聞くかどうかは別の話。複雑になりすぎる。大阪府、特別区、地域自治区があり、さらに(4特別区が共同で事務を処理する)一部事務組合がある。こんな複雑怪奇な制度を持つ地域は日本にない。大混乱するし、どこに何の権限があるか分からない。財政がもたないのでいずれ統合される」と懸念する。

■サービス低下か

 特別区の財政と住民サービスの関係について、「収入より支出が多ければ赤字になるが、自治体は赤字の予算は組めない。収入が減っても支出をその分下げれば、つまり住民サービスを落とせば成り立つ」。

 法人市民税や固定資産税など、大阪市の財源の3分の2が府の財源となり、この一部を府が交付金として特別区に分け与える仕組みだ。

 「府が毎年、特別区全体に渡す額を決める。大阪市の住民サービスの水準は、府内の他自治体に比べて高い。府は特別区も含めて全体に公平な調整をするので、ほかが沈んでいるのに特別区だけに財政措置することはできない。財源が潤沢にあればあり得るかもしれないが、府の財源は乏しく、これから夢洲(ゆめしま)開発など大型のプロジェクトを借金で実施する」とし、住民サービスの低下を予測する。

 もり・ひろゆき 1967年生まれ、大阪府出身。立命館大政策科学部教授。地方財政と公共投資を専攻。著書に「市民と議員のための自治体財政」(自治体研究者、2020年)、「大阪市自治を問う 大阪・橋下市政の検証」(学芸出版社、2015年)など多数。


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