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「日本との架け橋に」 留学生の気持ちつづる

2022年5月16日

 独立戦争のさなかに生まれ、最貧国と言われる環境で育ち、文化の異なる日本社会の一員となったバングラデシュ出身の男性がこれまでの人生を振り返る「パンツを脱いだあの日から−日本という国で生きる」を出版した。男性の名前はマホムッド・ジャケルさん(50)。「日本とバングラデシュの架け橋になりたい」という思いのこもった著書は、外国人留学生が日本で過ごす気持ちを考えさせられるとともに、日本人が見過ごしてしまいがちな日本の良さに気付かせてくれる。

著書を持つマホムッド・ジャケルさん

 戦争が終わり、バングラデシュが独立したのはジャケルさんが生後9カ月の時。ジャケルさんはバングラデシュでも放送されていたNHK連続テレビ小説「おしん」が好きで、印象に残っているシーンは、妊娠しているおしんの母親が雪の中で冷たい川に身を沈めるシーンだという。生んでも食べるものがなく、苦しい思いをさせるくらいなら、おなかにいるうちに楽にさせてやろうという母親の思いに、ジャケルさんは自身の貧しい環境を重ね合わせ、努力を重ねて成長するおしんの姿や、敗戦から高度経済成長を遂げる日本という国に希望を見いだす。

 苦労の末に日本に渡ったジャケルさんだが、文化の違いに驚き、日本語の壁に悩み、恋人との別れ、受験、保証人探し、生活費と入学金など、次々と直面する困難に自殺まで考えていた時期もあった。

 身元保証人になってくれる日本人との出会いが転機となり、大学へ進学。入学金はジャケルさんの兄たちが集めてくれた。ジャケルさんはこの時「日本で困っているバングラデシュの弱い立場の人たちへ、私はこれからの人生を賭けて、あなたたちに精いっぱい恩返しします」と誓う。

 ジャケルさんは今、日本の企業で働きながら、NPO法人関西バングラデシュソサイエティ(KBS)のチームリーダーとして、在日バングラデシュ人たちへの支援、バングラデシュについての情報発信、バングラデシュ人同士の交流などに携わっている。自身の経験から、来日したばかりの留学生にとって「致命的なのは『制度を知らない』ことでなく、『頼れる人がいない、教えてくれる人がいない』こと」と指摘し、「困っている人がいるなら助けたい」と活動を続けている。

 日本でつらいことも多く経験したジャケルさんだが、100回生まれ変われたとして「私は、100回とも、この美しい国日本に生まれ変わりたい」と記している。

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 ジャケルさんは21日、大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで出版記念講演会を開く。問い合わせは電話06(6444)0587、公益社団法人アジア協会アジア友の会。


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