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この街で暮らし続けるために 大規模地震から身を守るための心構え

2022年6月24日

 近年各所で発生する大規模地震を通して、私たちの防災に対する意識は以前よりも高まりつつある。しかし、まだ防災に対して具体的な行動に移せていない読者も多いのではないだろうか。本特集では改めて巨大地震の被害と対策について、特に「建物」に重点を置いて解説する。

上町断層系の活動による地震(上町断層帯地震)の想定震度分布
南海トラフ地震による津波浸水想定図

―地震はいつどこで発生してもおかしくない

 30年以内に発生すると予測されている南海トラフ地震。2013年10月に試算された被害予測に基づくと、想定死者数は13万3891人で津波による被害が大きい。被害エリアについては、大阪市内の西側全体が浸水すると想定されている。

 また同様に、上町断層帯地震の発生も予測されている。上町断層は豊中市から大阪市全域を経て岸和田市までにまたがっており、大阪市全域で震度5強〜7の地震がいつ発生してもおかしくない状況にある。

 来たる巨大地震に対して今必要なのは、正しい知識を身に付け具体的に準備をすることではないだろうか。

―地震に対する住民の備え

 地震が発生した場合、津波被害を想定して「遠く」より「高く」にいる方が安全を担保しやすい。災害時の避難場所は、各区が連携する避難先が記載されている「防災マップ」をまずチェックする必要がある。ただし、防災マップはそもそもの登録施設数が少なく、同じ区内でもエリアによって数に差が生じるなどの課題が残っている。

 一方で、自宅で避難生活をする可能性も大いにある。後述の通り、近年建設された高層ビル・マンションは基本的に耐震構造がしっかりしているため、いざという時の避難施設として十分機能すると考えられているからだ。

 地震に備え、自宅で避難生活を行う可能性も考慮して備蓄品をストックしておく習慣付けは大切だろう。そしてそれだけにとどまらず、住宅や避難場所の耐震強度についても考えてみる。

―地震に耐える建物とは

 地震に耐えられる建物かどうかは、建設時期と建設規模で判断することができる。1981年6月以降に建設されたビル・マンションは新耐震基準に沿っており、震度6強〜7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しないことの検証を行う必要がある。さらに直近だと阪神淡路大震災後の2000年に耐震基準が改正され、建物の頑丈さがより求められるようになっている。

 また、高さ60メートル(約20階相当)を超える高層ビルの建築には、建築基準法の規定よりもさらに厳しい基準での設計が求められている。このため、高層ビルは建設時期に関わらず必要な耐震性能を満たしているものと考えられる。

 つまり、2000年以降に建てられた3階以上の建物もしくは20階以上の建物全般であれば、地震・津波から逃れるには安全な場所だといえるだろう。

 では、これらの建物がどういった構造で地震に耐えるのかも説明したい。

―耐震構造もチェックポイント

 耐震構造には「耐震」「免震」「制振」の3種類がある。「耐震」は揺れに耐える、「免震」は揺れを逃がす、「制振」は揺れを吸収する、という違いがある。

 耐震は一般住宅に使われる基本的な構造だ。ただし、巨大地震に対してはまだ耐性が弱い。また、揺れがダイレクトに伝わるので家具の転倒・落下の危険は防げず、高層階になるほど揺れは激しい。

 免震構造は、地面と建物の間の地盤を引き離し「免震装置」を挟むことによって、地震の揺れそのものを建物に伝わりにくくする。高層階の揺れも耐震構造と比べると大幅に低減できるので住宅内の危険も抑えられる。一方で、台風などの強風による揺れや縦揺れ、津波には弱い。

 制振構造は、耐震構造の建物の柱や壁などに、地震や強風による揺れを吸収する「制振装置」を導入する手法だ。建物の揺れを抑えられ、繰り返しの揺れにも強い。また地震だけでなく台風など強風による被害にも効果的だ。

―命を守る最新技術

 免震・制振構造は各社がそれぞれ技術開発に力を入れている。その中でも注目されている技術の一つが、大林組の超高層制振構造システム「デュアル・フレーム・システム(DFS)」だ。

 同じ規模の一般的なビルと比べて、地震力(地震時に建物に加わる水平力)を3分の1程度に低減でき、上層階の水平応答加速度(床の揺れの激しさ)を小さくできる。

 建物の揺れを少なくすることで家具の転倒や破壊による二次被害を防ぐだけでなく、揺れる時間の長さも短縮できる。多くの高層ビル・タワーマンションにDFSが採用されている。

 地震大国・日本で暮らし続ける限り、地震に対してどう備えていくかは必要な知識だろう。職場や学校付近での避難場所の把握はもちろん大切であり、自宅でも避難生活ができるような備えをすることも忘れてはいけない。そして住宅の耐震についても、今一度見直すべきではないだろうか。来たる脅威に対してただおびえるのではなく、生き延びるために今できる範囲で備えていきたい。


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