あきない見聞録

大栗紙工

■代表者
 大栗康英
■所在地
 大阪市生野区巽北3の15の7
■資本金
 1000万円
2021年12月23日

「あったらいいな」を商品化 自社製品に老舗が挑戦 発達障害者の声 ノートに

1日約3万5千冊を作る無線とじノート自動製造機
大栗康英社長

 大栗紙工は1930年の創業以来、一貫して紙製品を製造。主に大手文具メーカーのノートを年間2千万冊以上製造しているが、創業90年を迎えた昨年、初めて自社製品「mahora(まほら)」を発売した。視覚過敏などの特性がある発達障害当事者の「あったらいいな」の声から生まれたノートは、府知事認定の大阪製ブランドのベストプロダクト選出をはじめ、多方面で高い評価を受けている。

 自社製品は長年の悲願だった。工場では1日3万5千冊を製造する無線とじノート自動製造機を3台稼働。大手請け負いのため製造に専念できるが、一方で「他人任せではなく、自社でコントロールできる商品が欲しかった」と3代目の大栗康英社長(66)。ものづくり企業として「作った商品を喜んでもらっているか知りたい」という思いもあった。

 きっかけは、広報業務のセミナー。発達障害の当事者団体とつながりができ、約100人から聞き取りを行った。

 「紙の反射がまぶしい」「書いているうちに行が変わってしまう」「けい線以外のNo.やDateの情報が気になって集中できない」−。寄せられた声は、どれも考えたことがないことだった。「仕様が決まっている中で作っている商品。それでも、ノートで困っている人がいるなんて知らなかった」(大栗社長)。

 紙の質や色、けい線の濃淡や幅を変えて試作を重ねた。色は13パターンを提示し、当事者に選んでもらった「レモン(黄色)」と「ラベンダー(紫)」の2種類を2020年2月に販売を開始した。

 見過ごされてきたノートの困り事に光を当てた商品は、メディアで度々紹介され、グッドデザイン賞や日本文具大賞デザイン部門優秀賞を獲得。当事者の「あったらいいな」は、多くの人の共感を呼んだ。新たに「ミント(緑)」も加わり、サイズも多角化。11月末までに累計約6万5千冊を売り上げている。

 「mahora」をきっかけに、他業種との協業が始まり、来年早々にも新商品が発売される。「これまでは大量生産しかなかった。他社の力を借り、相談しながら価値を認めてもらえる仕事をしていきたい」と大栗社長。創業90年目の挑戦は、新たな地平を切り開いた。



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