金井啓子の伴走で伴奏

見苦しい言い訳は傷口を広げる

2022年5月23日

経歴詐称がバレた国会議員

 私は現在、大学でジャーナリズムなどを教えている。肩書は「教授」である。多くの大学のウェブサイトで学部ごとに教員の一覧が掲載されている。仮に経歴を詐称して「〇〇大学教授」と書いたところで、サイトを見たり大学に問い合わせればうそはすぐに見破れる。選挙の候補者が選挙公報に「教授」という偽の肩書を書いて有権者をだましたら、おそらく捜査当局のご厄介になるだろう。

 ところが教授ではなく非常勤講師ならバレないと思ったのか、この肩書を詐称して世間から批判を浴びた国会議員がいる。日本維新の会の岬麻紀衆院議員である。岬議員は2019年の参院選で「亜細亜大学非常勤講師」と記し、これが経歴詐称だとして東京都内の男性から名古屋地検に刑事告発された。

 岬議員は過去に亜細亜大学などに招かれて講義をしたことがあるらしい。これは事実のようだ。私も年に数度、友人の記者を招き取材経験を学生に話してもらうことがあるが、岬議員はまさにこのパターンだろう。

 非常勤講師の「非常勤」とは、私のように常勤・専任の教員ではないという意味である。前期や後期に特定の講義を受け持ち、試験や単位認定にまで仕事の範囲は及ぶ。非常勤講師の位置づけは大学によって多少の違いはあるだろうが大筋として大差はない。なお、亜細亜大学も岬議員が非常勤講師であったことはないと否定している。

 非常勤講師の経歴を積み重ねて専任教員を目指す多くの研究者がいる現実を知っているだけに、こういった事例は絶対に看過できない。

 うそがバレた後の岬議員の言い訳にも驚いた。会見で「常勤の講師ではないという意味で非常勤とつけた」というが、そもそも岬議員の場合は非常勤ですらない。岬議員の言い訳は非常勤講師への理解が無知というよりも、社会全体の仕組みに無理解だと思わざるをえない。

 驚いたのは日本維新の会の松井一郎代表の言い分もそうだ。同代表は会見で、「1回でも報酬を得たのなら非常勤講師」と語って岬議員の肩を持った。松井代表も非常勤講師への理解がなさすぎる。

 それだけではない。松井代表の言い訳は、同じ肩書を持つ日本維新の会の他の議員にも疑惑の目が向けられることになりかねない。岬議員1人をかばったつもりが、日本維新の会全体への不信感を呼ぶことになる。リスク管理の観点からも最低最悪の言い訳会見だった。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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