にちにち動物百科

 動物園はワンダーランド。ライオン、キリン、チンパンジー…。大阪市天王寺区にある天王寺動物園は、都会の真ん中でありながら、非日常の世界が広がります。のんびりさんだったり、怒りんぼうだったり。私たちがそうであるように、動物たちも見ているだけでは分からない愛くるしい一面があります。飼育員だから知っている動物たちの性格や食事、クスリと笑えるエピソードも交えて紹介します。

☆18 コアラ

2019年9月12日

愛くるしい人気者

寝床がある屋内展示場から、外へ駆け出してくるアーク
10メートルほど高さのあるユーカリの樹上にたたずむアーク
ユーカリをかみ切るため、前歯は鋭い。かまれると大けがするほど

 動物園の人気者「コアラ」。ふわふわの毛に、黒い大きな鼻がチャームポイント。某メーカーのお菓子でもおなじみですね。しかし現在、コアラを国内で飼育している動物園は、天王寺動物園を含めてわずか8園。生息地のオーストラリアが輸出を制限している上、繁殖が難しく、飼育費も高いことを理由に、今後も頭数が減ることが予測されます。

 天王寺動物園で暮らす「アーク」(雄・13歳)に会いに行きました。

■ユーカリの上でのんびり

 同園では、1989年に豪・メルボルン動物園から3頭が寄贈されたことを機に飼育が始まりました。一時期は9頭が生活していましたが、現在はアーク1頭のみです。

 同園でも、アークを最後にコアラの飼育から撤退することが決まっています。

 天王寺公園側の「てんしばゲート」からすぐの“ユーカリの森”が、アークのすみかです。屋外展示しているのは、国内では珍しく、貴重な空間です。

 数種のユーカリが植えられ、そのどれにもアークの爪痕がぎっしり。季節によって、お気に入りは変わるそうですが、一度上がれば、日中はほぼ動きません。風で木が揺れても平気。木から木へ飛び移ることもあります。

 しかし、夜間は屋内で過ごさなければなりません。閉園間近になると、飼育員さんが呼びに来ますが、ユーカリで“釣れる”タイプではありません。

 そんなときは、はしごを木に掛けて、飼育員が木の上まで迎えに行き、頭を「ポンポン」。すると、自力でするすると降りてきます。飼育員さんとのやりとりも見どころの一つです。

■ストイックな偏食家

 コアラは、ユーカリの葉しか食べず、水さえ飲みません。しかし、このユーカリには強い毒があることでも有名です。

 俊敏性がないコアラが唯一確保できたのが、他の動物が手を出さないユーカリでした。そのため、コアラの盲腸は2メートルに進化(人間は5センチほど)。じーっと動かず、体力を温存しながら解毒しているのです。寝ているように見えて、毒と闘っているんですね。

 コアラの飼育費が高い理由は、ユーカリの栽培と輸送費。同園では、和泉市と河南町、鹿児島と和歌山で栽培しています。

 そうして確保したユーカリですが、アークが食べるのは、柔らかい新芽だけ。しかも、味が気にくわないと一切食べません。ユーカリを食べないのは、命に直結する問題。ユーカリの保管には温度や湿度に細心の注意を払います。

 ふかふか、つやつやに見えるアークですが、実際に体を触るとカチカチ。脂肪が全くありません。ユーカリしか食べず、強い毒にひたすら耐える。愛くるしいキャラクターを、ストイックな生きざまが支えていました。

【コアラ】 哺乳綱双前歯目コアラ科。オーストラリアに生息する有袋類。体が大きい「南方系」と体が小さい「北方系」がいる。アークは南方系。


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