大森均の釣れ釣れ草

釣りの終幕

2022年4月1日
あの有名な「海の幸」を描いた青木繁は石橋エータローの祖父になる

 以前、幸田露伴は釣仙と呼ばれるほどの無類の釣り好きと書いたが、文壇には釣り好きが多いと言われている。室生犀星、サトウハチロー、林房雄、山本周五郎、福田蘭童、坂口安吾、壇一雄、開高健など、多彩な趣味の変遷にも終生釣りだけは死ぬ間際まで変わらなかったという釣り好きに関しては、“狂”のつく迫力の文士釣り師たちだ。

 本当に文壇に釣り好きが多いかと言えば、それは疑わしい。昔から釣り名人は書き下手と言われているが、対してなんでもない釣行の様子を面白おかしく読ませる文人釣り師の才能に釣り好きが多いと、その存在を過大に感じたのかもしれない。

▽父への慕情

 もう30年以上前にクレージー・キャッツの石橋エータローさんが、テレビの番組で父である福田蘭童さんについて釣りを通して語っておられたことがなぜか印象深く残っている。福田蘭童さんは、あの天才画家青木繁を父に持ち、尺八の名手で洋曲を日本で初めて尺八によって演奏した。また、作曲の世界でも非凡な才能を発揮した人だ。千葉の勝浦の大鯛に魅せられて釣り宿「臨海荘」に通った随筆は、半世紀前には貴重な釣り場ニュースとしての役割も果たしていて、随筆を読んで釣り客が殺到したほどらしい。

 エータローさんは、父は早くに亡くなっている、と聞かされていたそうだ。彼の母は蘭童さんと別れ、彼は預けられた母の実家で成長した。17歳のときにお前の父は福田蘭童だと聞かされ、小田原の家を訪ねたが、温かく迎えてもらえなかった。エータローさんに言わせれば「おやじというより友達みたいにつきあえるようになったのは、クレージー・キャッツで売り出してから」であると言う。

 その後の父への「盲愛」ぶりがどうして膨らんだのかは本人ですら分析不能のようであるが、とにかく欲しかったお父さんが手に入って、恨みよりうれしさが勝ったということなのであろう。

▽孫を膝に乗せ大満悦

 「おやじが倒れる1週間ほど前に、女房と息子を連れて勝浦へ泊まりがけで釣りに行ったんです。最後の親孝行と覚悟していましたから、釣り宿で泊まって、いっしょに釣りをすることが何よりだろうと思いまして。その夜、臨海荘に泊まったのがおやじとひとつところで寝た最初にして最後の経験でした」と語っておられたが、5キロ以上の大鯛を11尾も釣り上げ、持ち帰るのに閉口したほどの華々しい戦歴をもちながらも、蘭童さんの最後の釣行には釣りの女神はほほ笑まなかった。フグ3尾で鯛は0。それでもご本人は、まるで大釣りでもしたかのように釣りに初めて同行した孫を膝に乗せ大満悦だったそうだ。

 人間どんな病人でも、誰しも明日、自分が死ぬとは思っていない。釣りは道楽の行き止まりと言われるが、その魅力は釣れるか、釣れないか、それが不確実だからだ。蘭童さんのような釣り師でさえ、最後の釣りの釣果には恵まれなかったが、しかし、釣り師であるがゆえに人生の最良の瞬間が、最後の釣行に訪れたのではないだろうか。

週末のイチオシ気配

■船(1)■栖原・和歌山

 日の岬沖でカワハギ堅調。同魚20〜30センチ20〜30尾見込める。胴つき3本バリ、ハリス2号、オモリ30号、エサはアサリむき身。要予約。▽かるも丸=電話0737(62)3527

■船(2)■比井・和歌山

 イサギ上昇気配。30日、日の岬沖に出て同魚26〜36センチ12尾とアジ35センチ前後8尾。これから初夏まで尻上がりによくなる。オモリ120号。要予約。▽岬旅館=電話0738(64)2975

■船(3)■南部・和歌山

 船から磯のフカセ仕掛けで釣るグレが型ぞろいでおもしろい。同魚35〜40センチ10〜30尾期待できる。午前便、午後便あり、問い合わせを。要予約。▽純栄丸=電話0739(72)5353

■磯(1)■家島群島・兵庫

 西島、院下島、坊勢島などの各磯でチヌの良型が気配出てきた。フカセ釣りで同魚40〜45センチ3〜5尾見込める。▽那波釣具渡船店=電話079(272)1708

■磯(2)■大引・和歌山

 マダイ期待。アシカの親・子、オオクラなどの磯で良型がフカセ釣り、カゴ釣りともに期待できる。他に底物が本格化寸前。▽村井渡船=電話0738(65)1041

■筏■衣奈・和歌山

 チヌ急上昇気配。29日、観音前筏で同魚42〜45センチ5尾(オキアミ)にアイゴ25〜40センチ数尾交じる。同日、コイズキ筏で62センチのカンダイが上がった。▽中長渡船=電話0738(66)0657

■カセ■串本・和歌山

 マダイ狙える。同魚40〜60センチ2〜5尾。マダイ針10号、エサはオキアミ。他に呑ませ釣りでヒラメ50〜60センチ1〜2尾。▽大裕丸=電話0735(65)0603

■ボート■紀伊長島・三重

 キス好調。同魚15〜23センチを20〜50尾。エサは石ゴカイ。手漕ぎボート50艘、船外機付ボート25艘あり。予約要。▽石倉渡船=電話05974(7)0712

■波止■岸和田・大阪

 エビ撒き釣りでハネ本格化。同魚40〜55センチ2〜5尾。70センチオーバーも期待できる。他にチヌ1〜3尾交じる。▽岸和田渡船=電話072(436)3949

 (大阪日日APG 錦 剛司)



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