金井啓子の現代進行形

令和の子どものための投票を

2019年4月4日

デマよりファクトの時代へ

 慣れ親しんできた「平成」という名前の時代が終わり、今はまだスマホで一発変換できない「令和」という言葉を使う日常を、1カ月のうちに迎えることになった。

 私は昭和生まれ。私事だが、平成を迎えた日は留学のため日本にいなかったこともあってか、私にとって平成という時代は「いつの間にか始まった人ごとのようなもの」で、「昭和っぽい」私には平成は「新しすぎてなじめない時代」という感覚が続いていた。だが、振り返ってみれば、私の人生の中では昭和よりも平成の方がはるかに長くなっていた。

 さて、平成はどんな時代だったのか。人それぞれ、さまざまな思い出や考えがあるだろう。だが、私にとっては自分が以前たずさわっていた記者という仕事に対する信頼感がこれほど落ちる時代になるとは予想していなかったという思いが強い。その思いがあるからこそ、さまざまな言説に関する真偽を検証するファクトチェックの活動に関わろうと考えた面もあるのかもしれない。

 ところで、新元号が発表されたのはくしくもエープリルフールだったが、翌日の4月2日が「国際ファクトチェック・デー」であることはご存じだろうか。すべての人々に、政治やジャーナリズム、そして日常生活において事実の大切さを呼びかける日とされているが、歴史は浅い。世界のファクトチェック関係者によって構成される「国際ファクトチェックネットワーク」(IFCN)が2017年に定めたばかりなのだ。それでも、この日の前後に世界各地でファクトチェックに関連するワークショップなどの行事が開催されている。

 日本でも、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が記者会見を行うとともに、これまでに公開していたファクトチェックのガイドラインを修正して第2版を発表した。今回の改訂の主なポイントは、ファクトチェックを行う際に対象となる言説を評価する九つの「レーティング」という基準を盛り込んだことであり、ファクトチェックを行う各メディアに活用を呼びかけていくという。「正確」や「虚偽」だけでなく、「判定留保」や「検証対象外」もある。多くの人になじんでもらいたい。

 統一地方選挙前半戦の投票日が3日後に迫っている。自分に与えられた大切な1票を投じる相手は、できる限り正確な情報に基づいて決めたい。候補者たちの公約やネット上でのうわさなどに関して、ファクトチェックを行う動きもある。ファクトチェック済みの情報のみを活用したいところだが、まだ全てを網羅しきれてはいない。あとは、自分が支持する候補の言葉だけをひたすら聞くのではなく、対立候補の言葉にも耳を傾けて自分の手元にある情報の量を増やしてから、票の行き先を決めるしかなさそうである。

 これが、令和の時代に生まれ育つ子どもたちへの最初の贈り物になるのだから。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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