金井啓子の現代進行形

祝日を疎む人がいる想像力を

2019年11月28日

感謝祭で感じた孤独感

 米国では感謝祭の休日は11月第4木曜日と定められており、今年はきょう28日がその日にあたる。私が籍を置くサンフランシスコ州立大学は1週間お休みとなった。感謝祭当日は休みの店がほとんどで、街は静まり返る。

 その代わりににぎやかになるのが各家庭だ。周囲に尋ねると、めいが住むラスベガスに行く人もいれば、夫の父親の家を訪れる人もいた。中には「楽しいけれど半ば義理で家族や親戚が集まる」という声も耳にして、日本で言うとお盆や正月を誰の実家で過ごすのかをめぐって小競り合いが起こるようなものか、とほほ笑ましく思ったりもした。

 伝統的に各家庭で七面鳥を焼いて食べるため、スーパーでは冷凍の七面鳥が並ぶコーナーが充実していた。七面鳥につけあわせるソースを作るためであろう生のクランベリーの実が入った大きな袋も、普段より目立つように置かれていた。

 私は、サンフランシスコで働く日本人の自宅へ招かれることになった。こちらに来て知り合ったその人の家には、何組かの日本人家族が集まって七面鳥を焼いて食べるのだという。喜んでお邪魔することにして、何を持参すればよいか聞くと「ではサラダを」と言われた。こういうリクエストがあると参加しやすくてありがたい。

 実は、招待される前は感謝祭をどう過ごすか迷っていた。1週間の休みを生かして米国内の遠くへ出かけることも考えたし、普段より観光客が減るであろうサンフランシスコで観光するのも悪くないとも考えた。だが、いずれにせよ「家族や親戚と一緒に過ごす特別な日」にひとりでいるさびしさが迫ってきて、気もそぞろだった瞬間があったのも正直なところだ。

 ただし、私の場合は半年間という期間限定の「孤独」であり「さびしさ」だ。だが、これがいつ終わるともわからない人はどうなるのだろうか。家賃高騰で金持ちしか住めない街と言われるようになったサンフランシスコでは、ホームレスの人々を非常に多く見かける。ネットで「感謝祭・食事・ホームレス」と検索すると、無料の食事が配られる場所の情報とともに、ボランティアをしたい人のための情報も出てきた。さらに高齢で自宅から動けない人に食事を届ける活動のお知らせも見つけた。

 大阪にある国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センターで私が電話相談ボランティアをしていた頃、年末年始はさびしさを深め死にたいと思う気持ちを強める人が多いと聞いたことがある。一緒に過ごす家族や親戚がいないことや、行政機関が閉鎖することなどが影響するらしい。

 孤独について少しだけ考えた今年の感謝祭。日本にいて今まで何げなく口にしていた「よいお年を」という言葉を、今度発する時には相手の状況を想像する力を備えたいと思うきっかけとなった。ただし、その先に私が何をできるのかはまだ答えが出せていない。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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