金井啓子の現代進行形

見えてきたコロナ後の課題

2020年5月28日

緊急事態宣言が全国で解除

 安倍首相は25日、大阪府と京都府、兵庫県に続いて、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県と北海道の緊急事態宣言の解除を宣言した。他県への移動の自粛は当面続くが、全面解除は約1カ月半ぶりである。形の上では全国で自粛が解除されるが、新型コロナウイルスが完全に消滅するわけではない。油断をすれば再び増殖する可能性もある。私たちは普段の生活を取り戻しながらも、同時にウイルスへの注意を怠らないことが大切だ。

 その一方、たとえ自粛が解除になっても、自粛要請で吹き出したさまざまな問題を今後どう取り除くかが、課題になるはずである。

 たとえば、コロナウイルスに感染した人はいわば被害者であるにもかかわらず、SNSなどで感染者を非難するような心無い書き込みが見られた。また「自粛警察」と呼ばれる自警団のような人々が活動して、営業する店に「なぜ自粛しない」と書いた紙を貼ってみたり、他府県ナンバーの車両を見つけては嫌がらせをする者も現れた。

 国際社会に目を向ければ、最初に感染者が多く見つかった中国に憎しみを持つ国々も、決して少なくない。研究のため私が今年の3月まで滞在した米国でも、外国人に対する差別感情が一気に吹き出した。

 仮にコロナ問題が完全に終息しても、私たちが心に抱いたこのような暗い感情がすべて消え去るとは思えない。コロナ問題は人々に移動や仕事の自粛を余儀なくしただけでなく、社会を分断し、人と人との間に感情的なシコリを残してしまった。その分断をいかに修復し、元の社会を取り戻すかがこれからの課題になるだろう。

 営業の自粛で落ち込んだ経済の立て直しも急がれる。私がよく通っていた大阪市内の料理屋も1カ月半は営業をストップし、オーナーは「その間は無職だった」とため息を漏らしていた。インバウンド(訪日外国人客)に頼っていたホテルやバス会社などの観光業も、死活問題だと聞く。

 政府や自治体からの金銭支援はあるが、それも限界がある。元の経済状況に戻るにはまだまだ時間がかかるだろうし、その間に倒産する会社が出るかと思うとやるせない気分になる。

 大学をはじめとする学校も同じだろう。新入生だというのに一度もキャンパスへ行けなかったり、実家に戻れない人もいる。その上、講義はオンラインで、人や社会との接触を絶たれた学生が全国にあふれている。彼らの心のケアも急務である。

 コロナ問題は、新種ウイルスとの闘いを強いられただけでなく、すべての人間の心に巣くう暗い負の部分も見せつけた。経済もボロボロになりかけている。私たちはウイルスに立ち向かうと同時に、人間が持つ負の部分とも向き合わざるを得なくなっている。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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