金井啓子の現代進行形

オンライン就活も福となす

2020年6月4日

移動の手間なしで勉強にも専念

 金井ゼミの4年生の就職活動は、多少の遅滞を起こしつつ、オンラインの説明会や面接が進んでいる。その「オンライン就活」について、彼らの話を聞いた。

 まずデメリット。ネット接続の関係で聞こえづらくなる時がある。実際に電話での面接に切り替えたこともあった。パソコンを持たない学生がスマートフォンで受けていた面接中に、充電量が少ないことに気づいて焦ったことも。面接に適した静かな場所は自分で探さなければならない。実家に自室がなく、家族が面接中に近づいてきたり、洗濯機などの物音がうるさいケースもあった。

 さらに、ビデオ通話では画面のどこを見ればよいのか迷う問題もある。「カメラ目線で話すのに慣れない。小さい頃から人の目を見て話せと両親から教わったので」とこぼしていた。相手の反応が読みづらいのも、同じような理由かもしれない。また、熱意をジェスチャーで伝えようにも、顔の表情と声しか使えず苦戦したという話も出た。「見た目や表情よりも、何を話しているかが重視されるため、論理的に回答する必要があると感じた」という。さらに、対面の面接なら会場に1時間前には着くようにする人も、自宅だと直前までリラックスしすぎて慌てる経験をしたらしい。

 一方、メリットも多く出た。前述のリラックスしすぎる話だが、自宅だとあまり緊張せずに済むといういい面もある。直前まで準備をして、自信を持って臨めるらしい。対面の場合、控室に荷物を置くよう命じる企業があるが、オンライン面接なら手元に資料を置ける。その他、「ノックや座り方など面接の作法を気にしなくていい」「全身を見られないのでソワソワしない」「スーツを着て会場まで往復せずに済む」といった声もあった。また、ビデオ通話アプリの性質上、「相手から見えている自分が見える」のもメリットだ。

 そして何よりも、会場まで行く時間と交通費、宿泊費をかけずに済むと話す学生が多かった。東京に企業が集中する今、コロナという災いが転じて、ゼミ生の最大の悩みだった大きな出費を強いられずに済むのはありがたい。

 なお、私にとってオンライン就活がもたらした最大の好影響は、学生が就活をしながらもちゃんと授業を受けられることだ。長年、授業と重なる日時に説明会や面接を行う企業にいまいましい思いを抱いてきた。高い授業料に見合う授業を貴重な学生時代に提供したいと考える私を、邪魔されてきたからである。

 だが、オンライン授業なら、授業と同じ日に面接や説明会があっても、両方に顔を出すことがたやすい。長年の悩みがこんな形で解消されるとは思いもしなかった。

 ただし、何より大切なのは、学生本人が望む職を得られるかどうかだ。コロナ流行の影響による不景気も予想されるが、卒業後の日々の糧を得るすべはどうあっても確保してほしい。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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