金井啓子の現代進行形

オンライン授業が変えたもの

2020年7月9日

学生との新たな関係を構築

 私が勤務する大学では8月までオンライン授業を行うと以前にも書いたが、それもあと4〜5回で終わる。4月の本コラムでオンライン授業への不安をぶちまけた私がここまでたどりついたことを思うと、感慨深い。

 私はビデオ通話システムを通じて生中継で授業を行っているのだが、先生によっては、事前録画した授業を学生がいつでも見られる形をとったり、ビデオ通話を使わず課題を与えたりしている。

 私は当初、事前録画の授業を定刻に流そうかと考えていた。だが、遠隔ではあっても私が話すその瞬間に学生が画面の向こう側で聞くという、一種のつながりを感じることが双方にとって大切だと考え、ライブ形式にした。

 受講者が十数人程度の場合は、画面上で学生に顔を出してもらい、音声でのやりとりもする。だが、大人数の講義では顔出しはさせておらず、誰も映らない画面の前で独り言をつぶやいている気分になる時もある。でも、文字でやりとりできるチャット機能で学生に何か書かせたり、アンケート機能を使ってその場で調べた結果を示して、双方向のコミュニケーションをとるよう努めている。

 ただ、生中継にはリスクもある。受講者の通信環境が悪いと見られないこともあるのだ。そのため、翌日までならば録画しておいた動画を見られるようにしている。

 対面授業では90分間ずっと教員が話していてもなんとかなるが、オンライン授業では短くなければ学生の集中力がもたず聞いてもらえないという話を耳にした。だが、昨年までの授業方法を大きく変えるのは私にとって難しく、結局ほぼ話しっぱなしとなっている。ただし、合間に休憩時間を取る。また、前回の授業の感想を提出させ次の授業で紹介してコメントを加えることを、例年よりもじっくりやっている。自宅にこもる時間が長い学生たちは、ゆっくりと考え事をする時間が普段より長いせいか、感想も例年より深みがある印象を受けるし、読むのが楽しい。

 ただし、まじめにオンライン授業に取り組む学生がかなり多い一方で、ライブ授業にアクセスをしただけでほとんど聞いていない様子の学生もいる。教室よりも目が届かない形であり、やむを得ないことなのかもしれない。

 すべての学生、すべての教員に適した、唯一無二の方法があるわけではないのは、教室における授業でも、オンライン授業でも同じである。いまオンライン授業を行っている教員たちは、昨年の今頃には予想もしなかった形で授業を提供する日々を、工夫を重ねながら送っていることだろう。秋には教室に戻れるのか、オンライン授業が続くのかは、まだ不明である。

 対面授業ができないために「やむを得ない代替策」として始めたオンライン授業。だが、そこで得た知見をそのまま一時的なものとするのも、なんだか惜しいような気がし始めているところだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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