金井啓子の現代進行形

説明会のない住民投票は不毛

2020年7月30日

民主主義は正確な情報とセット

 新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えてきた。大阪府でも7月28日に過去最高となる155人の感染者を記録した。

 そんな折り、大阪府では感染防止策として、5人以上での飲み会などを自粛するよう府民に求める方針だ。府民に抑制的な行動を促すことで、新型コロナウイルスのこれ以上の感染拡大を防ぐためだという。

 さて、いわゆる大阪都構想の賛否を問う住民投票が今年11月1日に行われる予定である。8月と9月の大阪府議会、大阪市会で都構想の設計図である「特別区設置協定書」が承認され、次に住民投票が待っている。

 一方、この府市の動きに対して「コロナウイルスの感染が拡大する中で住民投票はすべきではない」といった意見も耳にする。主に都構想に反対する自民党大阪市議団や共産党から出されている。

 私は、「今すべきではない」という意見には賛成である。ただし、住民投票で有権者がコロナウイルスに感染するリスクが増大する可能性が大きな理由ではない。コロナウイルスも怖いが、都構想の情報が大阪市民に十分に伝わらないまま投票するのは、民主主義の放棄だと思うからである。

 既に書いたように、大阪府は5人以上の飲み会を自粛するよう府民に求めることを決めた。だとしたら、当然のことながら、都構想の住民説明会も開かれないことになる。「飲み会は自粛。でも住民説明会なら許可する」では矛盾もはなはだしい。

 ところで、都構想の根拠法である「大都市地域における特別区の設置に関する法律」の第7条2項には「関係市町村の長は、前項の規定による投票に際し、選挙人の理解を促進するよう、特別区設置協定書の内容について分かりやすい説明をしなければならない。」と記されている。

 「関係市町村の長」とは大阪市長、「前項の規定による投票」とは住民投票、そして「選挙人」とは大阪市の有権者のことである。この法律は大阪市長に対して、大阪市民に都構想の「分かりやすい説明をしなければならない」と義務を課している。もし住民説明会がないまま住民投票を行えば、法律違反になる。

 前回2015年の住民投票では、大阪府知事と大阪市長は24区内の各会場で説明会を重ねた。賛成派も反対派もそれぞれ討論会を実施して、市民の理解を深めた。今回も直接型の説明会が望ましい。資料やネット配信のみの説明では十分とは言い難い。もしコロナ禍が理由で説明会等が無理なら、住民投票は先送りすべきだろう。

 住民投票は民主主義の基本であり、その前提として判断の基礎となる情報は絶対に必要。情報不足のままの住民投票では民主主義の自殺行為でしかない。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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