金井啓子の現代進行形

帰省できない今年のお盆

2020年8月13日

ご先祖も安倍政権にお怒りか?

 NHKが世論調査でこの夏に旅行や帰省をするか尋ねたところ、「旅行も帰省もしない」との回答が75%にのぼったという。

 今日は旧暦の迎え盆。私にとって、この行事は慣れ親しんだものであり、なおかつ特別なものでもある。例年ならば、栃木にある親戚宅に、私は大阪から、そして他の親戚も東京、京都、群馬から集まる。そして、墓参りを済ませた後に、長年お互いに食べ慣れた手料理を持ち寄って並べ、下は10代から上は80代まで十数人が共に狭い家の中で食卓を囲む。毎年何を話していたのだったかと思い出そうとすると思い浮かばないほど、ささいな話題ばかり。それでも、集まること自体が私たちにとって大切なのだ。今はもう亡くなった祖父母や叔母や父も交えて過ごした時間の思い出にもつながっているからなのだろう。

 毎年繰り返していたこの風景を今年は見られなくなろうとは、去年の今頃は想像すらしていなかった。新型コロナウイルス感染症の流行が始まった今年の春頃だってそうだ。数カ月で落ち着くだろうと思っていたのだ。

 ぎりぎりまで待って親戚と話し合い、悩み迷った末に今年は集まることをやめようと決めた。「また集まれるだろうから、今回はやめよう」とお互いに話したが、「また」はいつ来るのか、本当に来るのか、誰にもわかっていない。親戚と電話で話しながらそれを思うと、胸がチクリと痛んだ。

 さて、今回の帰省シーズンを控えて、東京都の小池百合子知事は6日、今夏を「特別な夏」として、お盆と夏休み期間の帰省と旅行を控えるよう都民に呼び掛けた。一方、安倍晋三首相は9日、お盆時期の帰省について「政府としては、一律の自粛を求めるものではない」と述べた。首相はさらに、緊急事態宣言の再発令は極力避ける考えを示し、「雇用や暮らしに与える影響を考えれば、感染をコントロールしながら、できる限り再宣言を避けるための取り組みを進めなければならない」とも語った。

 国内でも各地域によって感染状況や事情が異なるし、国民の行動を制限することによる経済への悪影響ももちろんわかる。だが、首相の言う「感染をコントロールしながら、できる限り再宣言を避けるための取り組み」の実効性が明確に示されているとは到底言い難い。

 政府への不信感は高まる一方。世論調査では、自分や家族が感染する不安を「大いに」または「ある程度」感じる人が87%にのぼっており、政府のこれまでの対応を「あまり」または「まったく」評価しない人が58%となっている。

 政府が命を守ってくれないならば自分で守るしかない、と思わねばならないのは、何とも悲壮な覚悟である。これでは国民が失望し、内閣支持率がますます低下するのは無理もない。残暑が特に厳しい今年のお盆。それ以上に厳しいのが安倍政権の行く末のようである。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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