金井啓子の現代進行形

迫る「11・1住民投票」

2020年10月15日

投票後は対立より協調を

 よそ者の私が時にドン引きするほど、大阪の街を強く愛する人があふれる大阪。その大阪でいわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が来月1日に行われる。賛成多数になれば、2025年1月1日に政令指定都市の大阪市が廃止され、四つの特別区としてスタートする。

 投票日を前に、賛成派や反対派が市内の各所で集会を開いたり、街頭で演説やデモを行ったりしている。

 その中のひとつ、「緊急配信 テレビでは放送されない!ほんまに「大阪市」がなくなる!?都構想と大阪自民党」と題するトークショーを、ミナミにあるロフトワンプラスWestで見た。

 進行役を務めたジャーナリストの吉富有治氏が程よく突っ込み、元大阪市会議員の柳本顕氏が「ここだけの話」を含めさまざまな話題を繰り出す2時間はあっという間に終了した。

 どの話も興味深かったが、中でも印象に残ったのが、2015年の住民投票においてわずかな差で反対側が勝った後に関する、柳本氏の「反省」の弁だった。賛成側と反対側は互いに大阪を良くしたいという思いに変わりはなかったはずだとの見方を彼は示し、対立ではなく協調路線を歩めるような努力をもっとすべきだったと語ったのだった。

 私としては、住民投票の「勝敗」がはっきり示された以上、対立をある程度引きずるのもやむを得ないと考えていた。だが、あの住民投票をめぐってひとつの家族の中ですら意見が分かれた「分断」のひどさを思い出すと、おのおのが「大阪がより良い街になるために」と考えた末の投票行動がそんなしこりを残すのはなんとも悲しい。議員たちが率先して協調し傷を癒やすべきだったという考え方には納得がいく。

 ただし、あの時ああすればよかったと反省しても、いまさら過去は変えられない。だが、未来はこれからいかようにも変えられる。

 11月1日の投開票が終われば、大阪市の存廃が決まる。それがどのような結果であれ受け入れ、対立はそこで打ち止めとして前に進むことを、賛成側にも反対側にも強く求めたい。

 条例ではなく法律にのっとって行われた2015年の住民投票の結果は、本来は法的拘束力を持つはずだったが、あの時の結果は空中にシャボン玉のように消えてしまった。今また全く同じ住民投票を行っているということは、大阪の人々はこの5年間を無駄に費やしたと言って間違いない。これ以上無駄な時間を過ごせるほど大阪には余裕はないはずだ。今度の住民投票の後に、3度目の住民投票を行うなんてことはあってほしくない。

 トークショーでは吉富氏から、住民投票後には松井一郎市長を招いて柳本氏と共に「すべてを水に流すトークショー」をやろうという提案も出た。対立より協調である。大阪愛にあふれたこの街で、いつまでもいがみ合うのはどうにも似合わない。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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