金井啓子の現代進行形

1票が大阪の街と未来を決める

2020年10月29日

迫ってきた住民投票

 コロナ禍で、日用品以外のショッピングを楽しんだり、友人たちと飲み会を開くことがほとんどなくなったため、私が大阪市内の繁華街を歩く機会がめっきり減った。でも、最近何度かミナミ周辺で用事があって出かけた。昨年とは風景が変わったと聞いてはいたものの、その変化ぶりにあらためて驚いた。

 道頓堀と堺筋が交差するあたりで列をなして外国人観光客を乗降させていた大型バスは、今では影も形もない。大きなスーツケースを引きずったり、化粧品やお菓子が山のように入ったビニール袋を抱えた人にぶつからないよう、よほど注意しないと歩けなかった歩道や駅構内は、今や縦横無尽に歩き回れる。さすがに戎橋近辺には多少の人出はあったものの、耳に聞こえてくるのはほぼ日本語ばかり。昨年まではあの周辺に行くたびにまるで外国の街を歩いているようだと感じたものだが、今となっては、逆に外国人らしき人に遭遇すると珍しくて驚くほどである。

 外国人観光客の急減に加え、国内に住む人たちの利用も減って、飲食店は甚大な打撃を受けた。私が大好きなある洋食屋は、テークアウトや冷凍して宅配便で送る新たな対応で何とかしのいでいるが、先行きは決して楽観視できそうもない。

 往時の勢いをすっかり失ったこの大阪の先行きを決める重大な行事が、ついに3日後に迫っている。いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票である。賛成多数になれば、2025年1月1日に政令指定都市の大阪市が廃止され、四つの特別区としてスタートする。

 大阪市の廃止と繁華街のにぎわいの間に直接的な関係はないと言う人もいるかもしれない。だが、大阪という都市がどういう道筋を歩むのかを決める住民投票であると考えれば、一概に無関係とも言えない。

 5年前の5月にも同じ内容の住民投票が行われたが、今の大阪が瀕(ひん)している危機的状況はその時の比ではない。

 住民投票の2日後には、海の向こうの米国で大統領選挙が行われる。二つの選挙の日程が近いのはあくまでも偶然である。だが、世界の第1位と第3位の国々で大きな変化を迎えようとしていること、人々の間の分断が深まっていることなど、状況は似通っている。

 大阪市廃止によるメリットとデメリットをめぐる情報が錯綜(さくそう)し、何を信じればよいのかわからない今、いずれの票を投じるのかを決めるのは容易ではない。だが、最後まで情報を読み込んでまずは投票所に足を運んでほしい。今までにも何度か書いたように、私は大阪市民ではないが大阪府民ではあり、投票結果には直接的ではないにせよ必ず影響を受ける。この一大事に自分の票を投じるという直接的な行動をとれないことが歯がゆい。だからこそ貴重な1票を持った大阪市民のみなさんに働きかけ、大阪の街をよりよいものとする票を投じてほしいとお願いするしかないのだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)



サイト内検索