金井啓子の現代進行形

大都市法の廃止か改正を急げ

2020年11月5日

市民間の分断を生んだ住民投票

 大阪市を廃止して特別区を設置する、いわゆる大阪都構想の賛否を問う住民投票は、2015年5月に続き再度否決されるという結果で終わった。賛否の票差は、5年前の約1万票から今回は約1万7千票に広がった。それでも僅差であることは間違いなく、大阪市の人々が文字通りまっぷたつに割れたと言って間違いない。

 今回の結果を受けて、本コラムとは別に本紙に寄稿した文章で私は、「大阪市は現状維持が決まったわけだが、市民の精神が分断されたままでいいわけがない。その溝をどう埋めるのか。私たちは大きな宿題を背負ってしまった」と書いた。

 大阪を愛すること、誇りに思うことにかけては、大阪に住むほとんどの人たちが誰にも負けないほど強い気持ちを共通して持っているはずだ。それほどの愛に包まれた大阪が、5年前に続いて今また深い溝を抱えているのはなんともしのびない。

 また、毎日新聞が1日に報じたところによると、大阪都構想の制度設計を担う大阪府と大阪市の共同部署「大都市局」が設置された2013年4月以降、都構想関連の事務には少なくとも100億円を超える府市の公金がつぎ込まれてきたという。

 市民間の分断を生み、このように莫大(ばくだい)な税金まで使っても得ることはゼロ。その諸悪の根源は大都市地域特別区設置法(大都市法)にあると私は考えている。大阪都構想の法的根拠となる同法は、そうとは書かれてはいないものの、大阪都構想を念頭に置いて提出され、2012年9月に施行された。この法律が存在する限り、今回の住民投票で賛成票を投じた人は3回目の住民投票を期待し続ける一方で、反対派は不安な日々を過ごすことになる。なぜなら、その構図は5年前と同じだからである。

 この住民投票は、5年前も今回もその結果は法的拘束力を持つものであった。だが、5年前に否決された結果も法律も無視され、2回目を迎えた。大都市法がある限り維新は永遠に「勝つまでジャンケン」をやめないと考えるのが自然だろう。

 そこで私がお願いしたいのは、自民党から大都市法の廃止法案を国会に提案するということである。菅首相が松井一郎大阪市長に近いこと、同法制定の際には自民党も力を貸したことから廃止は簡単ではないだろう。廃止が難しいならば、最低投票率や住民投票後から次の住民投票までの期間などに関する改正でもよい。このままの法律がある限り、大阪は分断され続ける。いや、大阪だけではない。他の政令指定都市で住民投票が行われ、同じような分断が起こる可能性は十分にある。

 つまり、これは大阪だけの問題ではないのだ。日本全国どこにでも起こりうる分断をこれ以上起こさせないために、全国から選出されている国会議員に今こそ行動をとってほしい。これが、住民投票を終えた大阪にいる私からの切なる願いである。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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