金井啓子の現代進行形

住民投票いまだ終わらず!?

2020年11月19日

府への広域一元化に疑問

 大阪市を廃止して特別区を設置する、いわゆる大阪都構想の住民投票が11月1日に終わり、前回2015年に続いて否決という結果となった。投票後の記者会見で維新の会の松井一郎代表(大阪市長)と吉村洋文代表代行(大阪府知事)は「3回目はない」と断言した。誰もがこれで都構想問題は幕が引かれたと考えたことだろう。

 しかしながら、そうではなかった。形は違っても都構想と変わらない議論が、再び大阪で起ころうとしている。

 吉村知事は6日の記者会見で、大阪市が持つ消防や都市計画など427にわたる広域事業を大阪府に移すと同時に、事業に必要な約2千億円の財源も府が受けるというプランを打ち出した。今後、府と市が広域一元化条例の策定を目指すという。

 一方、松井市長は11日、住民投票で否決された四つの特別区の代替案として、かねて公明党が主張していた総合区制定の条例案を来年2月の市議会で提出すると発表した。

 総合区とは、現在の大阪市を残したまま現在の24行政区を八つに再編するものである。この制度の導入によって各総合区が独自に使える予算は増え、総合区長の権限も増加。独立した自治体である特別区と似た制度ができることになる。

 この総合区案は、住民投票で賛否を問うた特別区設置協定書には記されていなかった。だから、松井市長が新たな提案と語っても、あまり違和感はない。だが、大阪市の広域事業を府に移し替えることは次元が違う。これは都構想そのものであり、このプランを府知事が打ち出したことには違和感というより大きな疑問が残る。

 特別区設置協定書には政令市を廃止して特別区を設置すると同時に、各特別区へ配置転換される大阪市職員の人数や、また大阪府に移される大阪市の財源や各事業の一覧が明記されている。府へ移る事業が広域事業であり、これは今回の住民投票で否定されたものなのだ。それにもかかわらず、吉村知事は「都構想は1ポイント差(の得票率)で否決された。約半数の賛成派の声を尊重することも大事だ」とし、広域事業の一元化を訴えている。

 逆を考えてみよう。もし今回の住民投票の結果が1ポイント差で賛成多数だったら、約半数の反対派の声を尊重して政令市を残すというのだろうか。おそらく吉村知事も松井市長もそんなことは絶対に認めないだろう。当然だ。それが法のルールだからだ。

 ところが、実質的にも本質的にも都構想の一部である広域事業の一元化だけは賛成派の「民意」を盾に正当化する。これをゴリ押しするようでは、大阪には法のルールも民主主義もないのかと世界の笑いものになるだけだろう。

 (近畿大学総合社会学部教授)



サイト内検索