新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えている。東京に次いで感染者の多い大阪でも、11月22日に過去最多の490人を記録して以来、連日のように300人前後の感染者が続いている。今後、冬型の気候でウイルスの活動がより活発になることも予想される。
いったんは第2波がおさまって元に戻り始めたかに見えた国内経済も、今回の爆発的増大でより深刻な影響が出始めている。
政府は11月27日、大阪市と札幌市に住む人に「Go Toトラベル」を利用した旅行を12月15日までは控えるよう呼びかけた。早速、ホテルや旅行会社には予約のキャンセルが相次いでいるという。大阪市の北区と中央区では、酒を提供する飲食店が時短営業や休業を余儀なくされた。大阪府内でも最大の繁華街を抱える北区と中央区では時短営業の影響で客足が遠のき、飲食店の経営者は厳しい年末を迎えることになる。
厳しいのは経済だけではない。医療現場はもっと大変だ。コロナウイルスに感染して病院に入院しようにも受け入れ先が見つからないのだ。地域によっては、入院を要するコロナ以外の重い病気を患ってもコロナ患者を優先するためベッドが足りず、しばらくは空き部屋待ちという事態になっていると聞く。
そこで大阪府も、コロナ重症患者を受け入れる専用の医療施設「大阪コロナ重症センター」の第1期分30床を11月末に完成させた。運用開始は12月中旬以降の予定という。
ところが、医師やベッドは足りても看護師が足りないのだ。11月30日現在、看護師は必要な130人のうち50人程度しか確保できていないという。ベッドがあっても看護師がいなければ入院施設として機能しない。
そもそも看護師不足の問題は、何年も前から病院関係者などから言われてきた。厚労省も、必要な看護師の数が2025年には最大で27万人不足する可能性があると既に指摘していた。看護師不足は今に始まったことではないのだ。看護師が不足する原因はさまざまだ。まず、結婚や出産などでの離職者が多い。また、看護師の数に比べてベッド数が多く、そのため入院患者の世話で勤務時間が長くなり、なかなか休みが取れないことも離職に拍車をかけている。
看護師不足の解決は容易ではないが、何年も前からわかっていた問題に国や地方は少しでも対処してきたのだろうか。特に大阪の場合、補助金カットなどで看護学校の閉校が決まったケースもある。待遇面でも看護師や保育士などは冷遇されてきたのではないか。
今からでも遅くはない。今回のコロナ問題に限らず、将来の不測の事態に備えて看護師不足を解決するのが国や行政の仕事だろう。
(近畿大学総合社会学部教授)
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