金井啓子の現代進行形

首をかしげる見回り隊の発足

2021年4月8日

大阪府の感染者数が過去最高に

 新学期が始まり、私の勤務先の大学では全面的に対面授業となった。まだ私のワクチン接種がいつになるかわからない今、多くの学生の前で授業をするのは、正直に言って怖い。

 だが、昨年度前期はすべてリモート授業、後期は一部のみ対面だったため、久しぶりに生で大勢の学生たちと接すると、ようやく「日常を取り戻しつつある」という喜びもわいてくる。特に、入学以来パソコンの画面上でしか接していなかった新2年生への私の思いは格別だ。別の大学で教えている友人は「2年生にはハグしたいくらい」だと言っていたが、私も似たようなもので、2年生の受講者が多い授業の初回は感極まってしまうほどだった。せっかく入学した大学に足を踏み入れることもなく、1年間よくがんばったとたたえたいし、ようやく会えた喜びも伝えていきたい。

 さて、4月5日から「まん延防止等重点措置」が適用された大阪府。7日には新規感染者数が878人と、過去最多を更新した。大阪府と大阪市は、職員や民間への委託による「見回り隊」を作り、飲食店の感染対策が徹底されているかを確認する取り組みを始めた。このニュースを耳にした時、コロナ禍が始まって1年以上もたって「最新の取り組み」がこれなのか、悪い冗談なのではないかと耳を疑った。

 見回り隊は、飲食店が時短要請に応じているか、アクリル板や二酸化炭素の濃度を測定するセンサーを設置しているか、会食時のマスク着用を徹底しているかを確認するらしい。だが、感染者数では全国でぶっちぎりトップを走っている大阪の状況が、こんなことで変えられると思っているのであれば、これを思いついた人のオツムの中をぜひのぞかせてもらいたい。

 それに、見回り隊の話を聞いていると、戦時中に近所の人同士で監視し合って、戦時下に「ふさわしくない行い」があったら告げ口していたという、ドラマでよく見かける陰湿な行動を思い出す。ただでさえ、コロナ感染に無頓着な人と神経質な人の間に溝があるのに、それをさらに深めるような策を行政が生み出してどうするのか。

 大阪市内にある私の大好きな飲食店に先日久しぶりに行くと、アクリル板をたった数日で設置するのは無理だからいっそ休業しようかとぼやいていた。仮にアクリル板がつけられたとしても、小分けして出すのが難しい料理をどうすればいいのか悩ましいという。また、マスクをつけずに話す客への注意はしづらいが、他の客が気にし始めてもめたらどうしたらいいのかとも話していた。

 大学の前期はこれから8月はじめの期末試験の時期まで、たえまなく授業が続く。学生たちからこれ以上大切なものを奪うような事態になってほしくない。それと同時に私自身もこれ以上「怖い」という気持ちをがまんしたくない。うららかなはずの春だが、気持ちは複雑である。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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