金井啓子の現代進行形

ワクチン接種が問いかけるもの

2021年6月17日

コロナで変わる社会の在り方

 4月に本コラムでも書いたように、私はあるオンライン勉強会に月に1度参加している。もともとレストランで飲み食いしながら議論していたのを、コロナ禍でそのレストランから料理を取り寄せた10人程の参加者が、自宅でパソコンの前で学び合う宴がもう数カ月続いている。

 5月にその会に出席した時のことである。ある人が新型コロナウイルスのワクチン接種を近く受けることになったと話し、「来月の会の時には2回目の接種も終えるから、久しぶりにレストランでやってもいいね」と続けたのだった。その会は年配のメンバーが多く、ワクチン接種が優先的に行われている65歳以上の人もちらほら。

 その時ふと私の心に浮かんだのは、接種を終えた人たちが集まっている中に未接種の人が入った場合、それぞれがどのような思いを抱くのかという疑問だった。

 ところで、来週21日から全国のいくつかの大学でも接種が始まることになった。私が勤務する大学でも、まず学生への接種が始まり、続いて教職員に対しても行うという。私自身は接種の機会があれば受けようと考えている。それは、いま高齢者施設でお世話になっている母と少しでも安全に会う機会を増やしたいという理由が最も大きい。

 大学でワクチン接種を行うのは、どの大学もできるだけ安心して対面授業ができるようにしたいという狙いがあるからだろう。ただし、大学が接種会場になるからといって、学生全員が必ず接種を受けなければならないわけではない。現に私の勤務先でも、学生に向けたお知らせの中で「あくまでも接種は希望制であり、強制するものではありません」と強調したうえで、家庭でよく話し合ったうえで希望者は申し込むように促している。

 新型コロナウイルス感染症は人々の間にさまざまな分断をもたらしてきたが、今またワクチン接種をめぐっても人々の間で大きく意見が隔たっている。現に私の周囲でも接種後の副反応を恐れて、接種を見合わせると話す人が複数いるし、その中には高齢者もいれば若者もいる。

 いま各国に生きる人たちにとって、パンデミックは全く新しい経験である。「コロナ後」の世界が近づきつつあるものの、その世界でどう生きていけばいいのかまだ答えは見えず、当分は手探りが続くのだろう。

 冒頭に書いた勉強会は、あと数回はオンラインで行うことで話がまとまった。レストランに集う日が戻ってきた時に、ワクチンを打った人、打たない人、打てない人がどうやって共存するのだろうか。いや、その勉強会以外のあらゆる場面でそう問いかける瞬間がすぐそこまでやってきている。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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