金井啓子の現代進行形

そっとしてほしい服部緑地の姿

2021年9月16日

過度な民間投資は自然破壊の道

 前回のコラムで、体質改善のためにウオーキングを始めたと書いた。早朝、すぐ近所の服部緑地公園(豊中市)で軽く汗が出る程度に歩くのだ。

 盛夏から晩夏にかけてにぎやかに鳴くセミの種類が移り変わり、最近はセミ以外の虫が鳴き始めたのを聞いて、季節の移り変わりを感じた。広大な池に無数のハスの花が咲き誇る前で休憩しつつ日の出を見ると、すがすがしい気持ちになる。数日前にはキンモクセイの花がもう香り始めていた。このような発見ができるのも、自然豊かな服部緑地公園ならではだと思う。私の友人はかつて、この公園の近くで野生のタヌキを見かけたという。ビルが乱立する都心ではこうはいかないだろう。

 ところで、大阪府は服部緑地公園など府営の公園の管理・運営を民間に委託する計画だという。民間企業からアイデアを募り、府営公園を「にぎわいの拠点」にする取り組みを始めるそうだ。カフェやレストラン、運動施設など民間投資を期待するらしい。

 このニュースを知ったとき、私はふと「にぎわいの拠点」とは何かという素朴な疑問を思い浮かべた。素直に受け取れば、多くの人が集まる場所ということなのだろうが、例えば服部緑地公園にそのような拠点は新たに必要だろうか。

 私が知る限り、この公園そのものがすでに一つの拠点になっている。大阪市内に比べて緑が多く自然環境が豊かなここは、まぎれもなく都会の喧騒(けんそう)に疲れた人たちが憩う拠点ではないのか。早朝からジョギングやラジオ体操を楽しむ人が集まり、昼間は親子連れが芝生やベンチでランチを楽しむ光景も見られる。今はコロナで中止を余儀なくされているが、これまでの休日には家族や友人たちがバーベキューを楽しんでいた。音楽を聴いたり、テニス・水泳・陸上競技・サッカー・野球などを行う場も用意されている。カフェやレストランでお金を使うことだけが「にぎわいの拠点」ではないだろう。

 また、府が言う民間投資という言葉も気になった。公園の場所を切り売りしないと大阪府の財政は破綻してしまうのだろうか。それなら大阪万博やIR・カジノで当初の予算を超えた財政出動を強いられるのは何なのか。

 納得がいかない私がインターネット上で署名を集め始めたところ、賛同してくれた人の数が開始から数日で既に700人を超えた。もう少したったら大阪府知事と大阪府議会に「大阪の服部緑地で民間事業者を公募して飲食店など新たな施設への投資を促すのを中止させてください」というメッセージと共に届けるつもりだ。

 大阪がにぎわい、暮らしやすい街になるのは良いことだ。ただ、その「にぎわい」にもTPOがある。都心には都心の、郊外には郊外のにぎわいがある。民間活力の導入というキレイごとで自然環境を崩すことを「にぎわい」と呼ぶ政治は御免こうむりたい。

 (近畿大学総合社会学部教授)



サイト内検索