三十数年前に私が大学生だった頃のアルバイトと言えば、短時間・短期間に稼いではそれを元手に遊んだり好きなものを買うためのことが多かった。バブルがはじける前だったこともあり、「おいしく稼いで遊ぶ」ことが可能な時代だったのかもしれない。
私は13年前に大学教員になった。学生と日常的に触れ合うようになると、アルバイトに追われている学生が多いことに気づいた。毎日のように働き、勤務時間が長く、夜勤や掛け持ちをする場合もある。「アルバイトばかりして、そこまでして遊びたい不真面目な学生が多いのか」という印象が最初の頃はあった。
だが、より深く彼らと関わるようになり、中には家庭の経済状態を明かす人も出てくると、アルバイトは私の想像したような「チャラチャラした目的」のためのものではないことがわかり始めた。私の勤務先の大学は他の私立大学と比べて学費がやや高いから、学生は比較的経済的に恵まれている家庭に育っているのだと思っていた。だが、返済義務があったりなかったりする奨学金を受け取りながら通う学生が想像以上に多かった。また、離婚した母親の収入だけが頼りの生活だと話す学生もいた。
ある時、夏か春の長期休暇にゼミ生たちを大学に集合させようとしたことがあった。すると、「学期中と違って今は定期券を持っていないから、交通費を払うのが痛い」と言い出す学生がいた。定期券でも切符でもお金を払うことに違いはないが、少しでも高い運賃を払うことを気にする学生がいることに驚いた。そのように交通費の負担の重さを嘆く学生はその人だけでなく、その後も遭遇した。コロナ禍で自宅にいることにより、交通費がかからないのはありがたいと考える学生もいるようだ。
経済的にあまり余裕がない学生にとって、自転車は貴重な足である。時には驚くような距離を自転車で大学まで通ってくる学生もいる。
2022年4月に大阪府立大学と大阪市立大学が統合して「大阪公立大学」が誕生する。従来の府大と市大のキャンパスに加えて、新たに森ノ宮キャンパスが大阪市城東区に2025年4月にオープンする予定である。教職員と学生、合わせて約7千人が通うことになる同キャンパスに設置予定の駐輪場には、最大でも20台の自転車しか駐輪できないことが判明した。
大阪市都市計画局は、最寄り駅から徒歩圏内であることなどを理由に自転車通学をこのキャンパスでは禁止すると明かしたという。学生が大学の主役なのに、学生の実態を何も知らないまま準備が進んでいるのだ。今はコロナ禍で私の勤務先の大学の駐輪場もガラガラだ。だが、通常は何百台もの自転車があふれ整理係の人が苦労していたことを思い出しながら、新大学の学生たちのためを考えた運営ができるのか不安を覚えずにはいられなかった。
(近畿大学総合社会学部教授)
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