金井啓子の現代進行形

新首相に望む政治以前のこと

2021年9月30日

自民党新総裁が誕生

 日本の総理大臣を実質的に決める自民党総裁選が昨日29日に投開票された。このコラムをご覧になっている読者は、既に新総裁の名前と顔はわかっているだろうが、この原稿を書いている28日現在、私には“未来”が見えていない。しかし、誰が自民党総裁や新しい日本の首相になっても、これだけはお願いしたいということがある。それは、次のようなことである。

 まず第一に、新首相はきちんと説明責任を果たす人であってほしい。首相だけではなく、閣僚や政治家は決まって「説明責任」を口にするが、実際の行動と言動が一致する人は稀(まれ)である。いざ矢面に立たされると、尻込みするか責任逃れに必死になる。

 森友学園問題や加計学園問題、そして「桜を見る会」で自身や自身の妻の関与が疑われながら、説明を尽くしたとは言い難い首相がいた。森友学園問題では苦悩した近畿財務局の職員が自殺しているというのに、その原因や背景を真面目に調べようとしない政権があった。

 このことを多くの日本人は決して忘れてはいない。忘れるどころか疑念は膨らむばかりである。どうか新首相はこのような疑惑を招くことだけは絶対にやめていただきたい。

 次に公文書を改ざんしない新首相であっていただきたい。つまり国家に対して嘘(うそ)をつかないでほしいのだ。そもそも国家が作成する公文書はその時代の歴史を示す重要な資料である。その公文書を改ざんするのは歴史の改ざんであり、後世への冒涜(ぼうとく)でもある。

 ところが残念なことに、わが国の首相の中には平気で歴史の改ざんに勤(いそ)しんだ者もいた。森友学園問題などに絡み野党から国会で追及されると、首相の意を汲(く)んだ官僚がのらりくらりとかわし、時に嘘を平気でつくこともあった。揚げ句、出してきた公文書は改ざんされたものも混じっていた。せめて新しい首相は、このような破廉恥なことだけは絶対にしないでほしい。日本という国家を破壊する行為だからだ。

 新首相はコロナ対策や経済対策、また日米や日中など複雑な外交問題から安全保障問題といった難問も数多く抱えている。コロナ対策は何十年、何百年に一度起こるか起こらないかの突発的な出来事かもしれない。ただ、経済や外交といった問題はいつの時代でも、誰が首相でも必ず直面するテーマである。

 だが、私が先に掲げた「説明責任を果たす」「公文書を改ざんしない」「嘘をつかない」は国家としての普遍的なテーマというよりも、政治家以前に人間として備えなければならない最低限のモラルではないか。

 優れた政治が出来る人は高度なモラルも併せ持つ。私が新首相に贈る言葉である。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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