吉武英行 五感の旅

冷めた効率優先のバイキング、お客にメリットは?

2020年4月6日
効率優先のバイキングにも工夫が必要

 バイキング、ビュッフェ−。表記はさまざまなれど、基本的にはセルフサービスで好きなものを好きなだけどうぞというスタイルである。筆者はいちいち取りに行くのが面倒で、いざ取りに行くと、あれもこれも食べたくなり、とりとめのない食事になってしまうのであまり得意ではない。

 先日、大衆価格(1泊2食1万円強)の旅館に泊まる機会があった。夕朝食ともにバイキング。食事には過度の期待はしていなかった。当日は7割方は入っていた。筆者は個人旅行だったが、団体のバスも何台か入っていた。

 さて、夕食である。ビュッフェテーブルが仮設で設置され、料理が並んでいる。ざっと見た感じでは品数もそこそこにあって、これならと期待した。しかし、現実は厳しかった。温かいものはみそ汁のみ。あとはすべて冷製料理か冷めたもの。目玉はなぜかゆでたカニだったが、身はスカスカで、おいしいとは言い難いものだった。

 ジャーに入ったごはんも何杯も食べたい味ではなかった。宿泊料金を考えると、これで精いっぱいだというのはわかる。調理人とホールスタッフで夕食を提供するには、バイキングスタイルにならざるを得ないというのも仕方ない。言いたいのは、それでも、なんとかおいしいものを出そうという工夫がほしかったということ。バイキングが素晴らしいと思える宿も当然存在する。素材ではなく、おいしく食べてほしいという、調理人の工夫の差であるように思う。

 効率重視でバイキングを取り入れる気持ちはわかる。だが調理人、接客係の誇りを持つべきだ。今のままでは、いちげんのお客だけになっているとしたらマイナスではないだろうか。宿の経営者、料理人、サービススタッフの方々が旅行をしたとき、こういうバイキングでは満足できないのではないか。たまには、他の宿を巡る旅も必要な修行ではないだろうか。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



サイト内検索