吉武英行 五感の旅

一流ホテルに感じた違和感

2020年8月31日
情熱と努力でいいホテルにしてほしい

 6月のある日、私はあるミーティングで大阪市内屈指の有名ホテルTを訪れた。

 玄関では、交通整理のためかベルマンの制服を着た年配スタッフが立っていたが、ホテルに入る私と目が合ったにもかかわらず、無言のまま…。この日、私は最寄りの駅から隣のAホテルを抜けてきた。そこではあちこちのスタッフから「いらっしゃいませ」と声をかけられ、私も笑顔で「こんにちは」と応えながら、「今日は通るだけでごめん。でもホテルはやはり気持ちいいな」と思いながら歩いてきたところ。

 だが、目的のTホテルの玄関では「いらっしゃいませ」の一言も言えないベルマンに遭遇した。年配でもベテランではなく、シルバー人材センターの派遣スタッフかもしれない。Tホテルのミーティング会場までかなりの距離を歩いたが、「いらっしゃいませ」の声は一度もなかった。

 会場では、テーブルに並んだ資料を持ち帰ろうかと、そばに立っていたスタッフに尋ねたところ、「私はホテルの者なのでわかりません。主催者の方に聞いてください」とぶぜんとした対応。セルフサービスと決まっていても、飲み物が置かれていれば目を配り、困っているお客がいれば手を出してしまうのがホテルマンではないだろうか。

 ミーティングの後は友人たちと食事をしようという話になったのだが、私以外にもTホテルに違和感を覚えた人がいて、隣のAホテルに変更になった。Tホテルは広大な敷地と庭園を持つ、貴重なホテル。四十余年前、関係者たちが並々ならぬ情熱と努力で創りあげたと聞く。現在のスタッフにももう一度、当時の人々の気持ちを思い出していいホテルを創ってほしいと切に願う。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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