吉武英行 五感の旅

青春の忘れ物を取りに…「江ノ電」

2020年11月23日
青春時代を思い出す江ノ電

 初めて経験する2泊3日の検査入院。3日間、何の予定もない真っ白な頭の中。青春時代に過ごした東京の生活を回想してしまう。けっこう長い期間、東京で暮らし、湘南にもよく出かけた。そして「江ノ電」を思い出す。湘南を訪れる度に、いつか乗ってみようと思いながら湘南を後にした、そんなシーンがよみがえる。退院後、もう一日休みを取ろうと決め、新神戸から新幹線に飛び乗る。「江ノ電」に乗ることだけが目的の超衝動旅だ。

 江ノ電は藤沢駅と鎌倉駅が起点になる。藤沢駅から乗車すると少しでも混雑を避けられると聞く。降りてみたい駅は江ノ島駅と決めていた。江の島の風景で青春を振り返る。この駅は江ノ島の玄関ともいえる。次の腰越駅は路面走行区間。今の時代、路面走行する電車は珍しい。江ノ電が近づくと静かに信号が鳴り出し、歩行者、車が停止する。まさに、江ノ電と共に生活しているのが垣間見える。こんな近くに電車を見ることはなかなかない。びっくりするくらいの迫力だ。

 腰越駅を出て鎌倉高校前駅に向かう途中、海が見え始める。この瞬間、車内には「ワアーッ」という歓声が! この鎌倉高校前駅はホームの目の前が海。時を忘れ、ずっとベンチに座っていたくなる景色だ。

 「江ノ電」の乗車時間は34分。この34分の中にはたくさんの見どころ、思い出があった。車窓から海が見え隠れする稲村ケ崎海岸。関東駅100選に選ばれた極楽寺駅等々。この街に住んでみたいと青春時代にも憧れていたことを思い出す。青春の忘れ物を取りに戻ったような、そんな衝動旅。皆さんも、昔の忘れ物を取りに戻る旅を計画してみるのもいいと思う。旅はいろいろな宝物に出合うものだ。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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