吉武英行 五感の旅

高齢者とホテル

2021年11月1日
暗い照明は高齢者にとってはつらい

 仕事柄、ホテルを利用するのは宿泊だけではない。取材等で訪れることも多い。宿泊者ではないとわかると、スタッフが「ウチのお客じゃない」とあからさまに態度を変えるホテル、それでも礼儀正しく接してくれるホテルなど、さまざまな側面が興味深い。

 というのは余談だが、ある人物のインタビューで某ホテルの客室を訪れたときのこと。エレベーターに乗り込むと、中は薄暗く、階数を示すボタンは小さく非常に見づらいものだった。さらに縦長で下の階は目線よりはるか下の腰の位置。同行した定年間近の連れは、目的階のボタンを探して腰をかがめ、目を凝らす始末。

 一般に暗い照明はレストランでも問題だ。筆者が若い頃、ある高層ホテルの最上階のキャンドルライトディナーが売り物のレストランで、年配の上司はメニューが読めないと騒ぎ、スタッフが懐中電灯を持ってきたことがある。ここは本物のフレンチのシェフがいたが、その素晴らしい料理も暗くてよく見えない。「これじゃ、こしょうと虫の区別もつかない!」と口の悪い上司。この時は笑っていた筆者も、今ではメニューが読めず苦労している。

 アジアのリゾートホテルでも、ムード優先の暗いレストランが目立つ。ただし、欧州の高級ホテルでは、お客の多くが社会的地位や財産がある人。つまり年齢層が高いということで、高齢者を視野に入れたホテルづくりをしている。これらの人々は自分にとって不都合なところがあれば文句を言うので、ホテル側も無視するわけにはいかない。

 ホテルの質は、お客と共に向上していくと言われる。ユーザーの要望で改善を重ねたと思われるホテルに出合ったとき、筆者にはそこが質の高い常連客を持ち、ホテル側も思いやりを持って対応していることが感じられる。(ホテル・旅館プロデューサー)



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