吉武英行 五感の旅

モンスターゲスト

2021年12月27日
モンスターゲストに立ち向かう旅館のスタッフの皆さんには頭が下がる

 ある旅館でチェックアウトしたときのこと。先代から旅館を引き継いだ若主人と世間話をしていて、たまたま日帰り入浴の話になった。この旅館は館内に宿泊客専用の内湯、露天風呂があり、敷地内に別棟の浴場がある。別棟の浴場を日帰り入浴のお客さまに提供している。

 それに不満を言う日帰り客のモンスターゲストの話だ。「どうして旅館内の風呂に入れないんだ」と怒鳴る方も。中には「もういい、入らない、ブログに書いてやるからな」と言って帰る人もいるとのこと。帰り際に玄関の戸を蹴られて、壊されたこともあるとか。それにしても、戸を壊すのは立派な器物損壊罪だ。

 ここの温泉は35度前後と低い。沸かし湯と源泉に交互に入って、長時間入浴するというスタイルで、1時間から長い人で7時間くらい入浴するそうだ。この湯を目当てに来るお客もいるのだが、知らずに来るお客もいる。日帰り入浴のお客だが、「あんな冷たい風呂に入れるか、風邪をひいたらどうしてくれる」と怒鳴り、入浴料をお返ししたとも聞く。

 こういう人は熱い湯でもやっぱり文句を言うのだろうか。自分の思い通りにならないと不満をぶちまける人は昔からいたが、最近はそれが増えているような気がする。旅館やホテルの場合はモンスターペアレントならぬ“モンスターゲスト”ということになる。おそらく全国の旅館の方々は多かれ少なかれ、こういうモンスターゲストの来襲を受け、それに立ち向かっているのだろう。大したものだと思う。

 ちなみにこのコラムでいつも書いているのは、クレームではなく「こうすればいいのになぁ、惜しいなぁ」という意見である。と、言い訳しておく。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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