吉武英行 五感の旅

ルールを明示する宿

2022年1月10日
“注文の多い旅館”もいいのかも

 以前から気になっていた、岡山県北部の旅館を訪れた。廃校になった小学校を旅館にしたもので、山小屋のような簡素な宿だが、周囲の自然が素晴らしいという話だった。

 到着してみると、街道から少し外れた高台にあり、駐車場は、おそらくグラウンドだったとおぼしきところ。木造の建物は外観も中身も学校の雰囲気をしっかり残していて、ノスタルジー満点である。

 受け付け後、宿の案内を書いた紙をもらって、部屋に入ったのだが、その紙を見て驚いた。宿で守ってほしいことが書いてあるのだが、これが結構細かい。夕食は18時〜19時、朝食は7時〜7時半、冷めると味が落ちるので温かいうちに食べてください。その時間に来ないと片づけます。食後は食器をカウンターまで下げてください。持ち込みのビン、缶は持ち帰って下さい。置いていく場合はワイン、ウイスキーなど1本200円、缶、ペットボトルなど50円をごみ処理料金としていただきます。

 これはなかなか“注文の多い旅館”だと思って共用のトイレに入ると、「スリッパは後の人のために並べてください」という張り紙。なにもそこまでルールでしばらなくてもいいのでは。しかし、よく考えてみると、どれもそんなにむちゃなお願いではない。持ち込みのビン・缶を持ち帰るのはエチケットだし、トイレのスリッパをきれいに使うのも、常識のある人なら当たり前のこと。それを守らない人が多いということなのだろう。

 夕食会場は、以前講堂だった建物で、なかなかいい雰囲気。料理は質素だったがおいしかった。19時過ぎても追い立てられる気配はない。ルールはルールだが、厳守しろということではないのだろう。お客の好きなようにというスタンスの宿もいいが、ルールを明示するのもいいのかも。トイレのスリッパが乱れていないというのは、気持ちがいいものである。(ホテル・旅館プロデューサー)



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