吉武英行 五感の旅

気ままな旅もいいもの

2022年2月28日
未知の場所と予想外の体験は気ままな旅の醍醐味

 温泉旅館へ行くときに、インターネットで旅館情報をチェックするのが当たり前の時代。一昔前なら、ガイドブックや雑誌の特集をストックしておき、出掛ける前に研究したものだが、現在はとりあえずネットでチェック。宿のホームページも年々充実し、客室、風呂、料理などが丁寧に紹介されていて、旅館の概略が分かる。さらにリアルタイムの空室情報があり、ネットから予約できる。

 便利と言えば至極便利な世の中だ。ガイドブックを見て旅館に電話をかけ、空室状況、料理と部屋のことを尋ね、予約に至るというかつてのスタイルからすればスマートだし、お互いの言い間違い、聞き間違いもない。あらかじめ知りたい情報を得ているから、着いてからこんなはずではなかったと嘆くことも少ない。ネット社会の恩恵である。でも旅の醍醐味(だいごみ)である、未知の場所へ行って予想外の体験をするということからするとつまらないという意見もある。

 去年の夏、ある温泉に行ったときのこと。秘湯系の宿に泊まった。ここは湯にキノコを漬け込んだ変わり種のお湯である。その温泉でたまたま一緒になった年配の男性に「キノコ湯」の話をすると「これはいいところに泊まった」と喜んでいた。聞いてみると、旅館案内所で紹介してもらったそうだ。

 「妻と2人、車で気の向くままにいろいろなところに行っていますが、宿の予約はしません。ここで泊まりたいと思ったときは、そこの案内所で空いている宿を紹介してもらいます」。宿を決めずに気に入った景色を見て回り、旅館案内所に飛び込んで宿を紹介してもらう。スケジュールに縛られない自由な旅を楽しむ老夫婦に、気まま旅の神髄を見た。

 決められた行程に沿って行くのが「旅行」、気ままに過ごすのが「旅」。これからはそういうふうに旅を考えてみよう。(ホテル・旅館プロデューサー)



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