吉武英行 五感の旅

寂れるホテルの共通点

2022年5月2日
人気のホテルや旅館は工夫を凝らして進化を止めない

 旅のライターの例会で伊豆の○温泉に行ってきた。進化を続ける温泉地を体験するチャンスと期待していた。例会の会場となったホテルは客室数120。40人の例会参加者用の部屋は20室。他に100室もあるというのに、館内はガラガラ。他のお客といえば、10人ほどのインバウンドらしき中国人グループを見かけただけ。

 筆者の部屋はツインの洋室。通常シーズンに1人1泊2食付き1万5千円程度の設定らしい。必要最低限のものだけ置かれた殺風景で古びた部屋。浴場に置かれた1枚ずつの薄手のハンドタオルとバスタオルは、大浴場にも持参して使うようにと書かれていた。

 湯船は表面がザラザラ。宿泊客を喜ばせようという心遣いは皆無。着席ビュッフェのパーティーは地元の町長や観光局長、ホテルの支配人も参加し盛んに○温泉の売り込み。「われわれは究極のおもてなしを目指しています」

 当会長は88歳と高齢。普通のホテルではスタッフが手を貸し料理を運んでくれるが、ここでは誰も気が付かない。隣のテーブルに座ったホテル支配人はすっかり“お客さま”で、周囲に気を配る気配はなし。現地の人々は、お客さまに来てほしいと主張するが、そこを訪れたお客がどう感じるかを全く考えていない。お客を満足させよう、喜ばせようという基本的な精神が欠如している。「メディアを紹介して」と言われても無理な話。海外でも国内でも、これは筆者が見つけた寂れた観光地やホテルの共通点だ。

 逆に人気のホテルや旅館は現代人のニーズに合わせて、いや、むしろ先取りして工夫を凝らし、どんどん進化中。日本国内にはホテル、旅館は山ほどあり、ユーザーには多くの選択肢がある。インターネットの普及で口コミの力も大きい。例会のメンバーは、旅が仕事。今回の出席者で満足したという人は「ゼロ」であった。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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