吉武英行 五感の旅

若きホテリエの感触は

2022年6月27日
サービスの演出は無限大。ガンバレ、若いホテリエたち

 数年ぶりにホテルスクールで話をする機会があり、楽しい時間を共有できた。

 「ホテルを楽しむ」と「ホテル勤務を楽しむ」は、必ずしも一致しない。むしろ至難の業に思う。生徒の中にも「ホテル好き」がいて、アルバイトでお金を稼ぎ、格安パックを見つけて泊まり歩いている。就職先もホテルと思いきやそう甘くはなく、お客としての喜びを知ってしまった彼らはおおむね2タイプに分かれる。就職は絶対ホテルが“イイ派”と“イヤ派”。「ホテルは利用するもので、働く場所ではない」などと評価する者もいる。

 どの業界にも見られる勤務前と後のギャップ感だが、その幅が大きく感じられるのがホテルの特徴の一つだろう。飲食店におけるサービス係も同様で、同じレストランでも、サービス係に比べ厨房(ちゅうぼう)はさほど辞めないという。

 筆者のことを「ホテルが、食が好きなんですね」とよく言われる。自分では全く意識はしていないのだが、すこぶる楽しそうに話をしているらしい。果たして、私はどのような視点で「ホテル」や「食」を「好き」と捉えているのだろうかと考えてしまう。「食べるのが好きだから」を「食の仕事」を目指す動機に挙げる生徒は多い。消費者側の視点の「好き」が、仕事として企画者側の「好き」に結び付けられるのか、多少の疑問はある。

 似た業界のようでいて、かなり異なるホテルとフードだが、本来本能である「食べる」と「寝る」を、どちらも文化に変え、具現化する業界という見方が、私の中のサービス業としての両者の共通項にあるかもしれない。

 サービスは、お客ならばボーっとしてても受けられるが、仕事にすると自ら機転を利かし演出しなければならず、立場によって特性が180度変わるもの。その分、演出のすべは本来無限で、醍醐味(だいごみ)もあるはず。笑顔は無料。ガンバレ、若きホテリエたち。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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