澪標 ―みおつくし―

大阪の地の利「日日是笑日」

安井 潔
医療法人 弘清会  四ツ橋診療所院長
2019年9月10日

 1972年にここ四ツ橋に診療所が誕生して今年で47年となる。現在、私の自宅は大阪にないが、業務の時間を考えると大阪で過ごしている時間が圧倒的に多い気がする。患者さんは近隣の方がやはり多く、スタッフも大阪出身もしくは在住の者が大半である。

 つまり私の周りは大阪の文化でがっつりと固められていると言ってもよいだろう。全国的に“大阪の文化は独特だ”というイメージはあるだろうが、私自身がその中にどっぷり漬かっているため、日常で別段意識することはない。しかし、他府県の方からするとやはりその独自性を顕著に感じることがあるようだ。それはわが診療所も例外ではない。

 ある時、スタッフの一人が笑っているので理由を尋ねてみた。別のスタッフが自分の後ろを通ろうとしているので、道を譲るために少し避けたところ「ありがとうー!でもそんな避けんで大丈夫やで!私細いからなー!」という風に声を掛けられ、思わず笑ってしまったのだと言う。「私にはそんな面白い言い方、絶対に思い浮かびません。大阪の人は言い回しが本当に面白い。患者さん含めてそうです」。他府県出身の彼女の感想である。どんな時にそう感じるのか、続けて尋ねてみた。

 例(1)「会計の際のやりとり」

 10円などの端数が出る金額を提示すると「んー細かいのないわ」と言われる。この後、大体「その分いいにしてくれへん?」もしくは「その辺に落ちてない?」と続くらしい。初めて言われた際にどう返答しようか悩んでいると「大きいので払ってお釣りは私にくださってもいいんですよー!」と隣にいたスタッフがすました顔で返し、患者さんも笑って支払いを終えたそうである。

 例(2)「新しいスタッフが入った際のやりとり」

 定期的に通院されていてスタッフの顔を覚えておられる患者さんが「お、新人さん?」と声を掛けてくださった。その後かわいい人が入ってよかったねと顔なじみのスタッフに話しかけると「美人ばっかりでしょ」とにこやかに返答する。患者さんは「ほんまやな!ここに来たら奇麗どころに囲まれて、血圧が上がってしまうかもしれんわー!」と笑いながら去って行かれたそうだ。

 あらためて挙げられると大変大阪らしいやりとりである。双方の返答によって結果的に笑ってオチているのが特徴と言える。笑っていたら病気にならないとは決して言えないが、笑うことで何かしらの良い作用をもたらす事例は確実にあるだろう。そしてそれは自身の心体のみならず、周囲との関係の面でも確実にある。何事にもメリットとデメリットがあるものだが、日々たくさん笑うことに関しては悪いことが一つもない。

 「日日是好日」もいいが「日日是笑日」というのもなかなか良いと思う。そうしやすい大阪の地の利、私ももちろんだが、これを読んでおられる皆さまにもぜひ生かしてもらいたい。

 (やすい・きよし、大阪市西区)



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