澪標 ―みおつくし―

なぜ息子は「社長ごっこ」をするのか

藤田ツキト
株式会社シカトキノコ クリエイティブディレクター
2020年1月13日

 私が経営するデザイン会社の企業理念は「コドモスピリッツ」です。これには「常識や思い込みにとらわれず、遊び心を持ち続ける」というサブタイトルがあり、「世の中はこういうものだ」というような思い込みに常に疑問を投げかけ、どんな仕事でも、知識を詰め込んでいない子どもの頃のような遊び心を持ってチャレンジする精神がなければ、面白いアイデアやデザインなんて生まれないという思いを込めています。いつもアイデアに詰まった時は「えーい!」といろんなことをむちゃくちゃにして、遊び心を復活させてから真面目にお仕事に戻ったりしています。

 と言いつつ、私は子どもの頃、全くもって遊び心のない、おとなしく、なるべく目立つことを避ける生き方をしていました。夢も希望もなかったし(別に絶望していたわけではありませんが)、騒いだり、はしゃいだりすることも少なかったのです。周りの友達や大人の顔色を伺いながら、いじめっ子にもなりたくないし、いじめられっ子にもなりたくない。目立つのは恥ずかしいので、空気のような存在になり、究極の「普通」ポジションをクラスで探しているような学生時代でした。それがなぜ大人になって、「コドモスピリッツ」などと発言しているのかは長くなるのでやめておきますが、いろいろあって、いろんなことを楽しめる大人になりました。

 そんな私がいま気になっているのは、一人息子(小1)のマイブームです。自宅が事務所だったり、イベントの手伝いに連れていったりで両親が働く現場を間近に見ているせいもあるかもしれませんが、「社長ごっこ」がブームなのです。自分で架空の「一般社団法人」を作り、社名やロゴまで考えています。事務所にあったネームホルダーに、自分と私と妻の名前を書き、学校から帰ってくると真っ先にその名札を首から掛けさせられます。息子は社長役、私たちはスタッフ役です。一般社団法人の代表として、晩ごはんの時には、いただきますの前に「今日も一日がんばりましょう!いただきます!」を唱和してから食べ始めます。仕事終わりに、また仕事が始まる感じです…。

 架空の法人の事業ビジョンもあり、自らも通っている「放課後等デイサービス」をやりたいそうです。近所の施設とかぶらないジャンルを考えたり、送迎用の車種は何にしようかたくらんだりしています。果たしてこれはコドモスピリッツなのでしょうか。無邪気にはしゃいでいるようにも見えますが、内容に子どもらしさはありません。他に興味があることは鉄道と相撲と神社めぐり、好きなものは温泉。ジジィか!(笑)。そんな息子のマイブームは2020年になっても去ることなく、いまも続いています。

 息子の遊び方(本人は真剣に仕事)を見ていると、子どもはこういう反応をして、こういう遊びをするものと思い込んでいた大人の「常識」にとらわれてはいけないことに改めて気づかされました。正直この遊びに付き合うのは面倒くさいこともありますが、これからもコドモスピリッツを失わない大人とデザイン会社であり続けられるよう、遊び心を持って、2020年もお仕事に励んでいきたいと思います。くしくも今年は「子(ね)年」でしたね。子どもと楽しく過ごす一年にしたいと思います。みなさま本年もよろしくお願いいたします。

 (大阪市東成区、ふじた・つきと)



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